毎年多くのドラフト指名選手を輩出する東京6大学。そのためリーグ対戦の結果はその年のドラフト戦略を考える上で重要な要素となります。そのためこの記事では各大学ごとのドラフト候補選手の春季リーグの結果について振り返りたいと思います。振り返る選手は以下の通りです。20年解禁の早稲田・早川投手や慶應・関根投手なども触れたいところですが、そうなるとあまりにも選手数が多くなるため17年・18・19年指名候補選手のみとします。()は指名解禁年となります。いや、それでも多いんですが・・・
【東京大学】
宮台康平投手(2017)
【早稲田大学】
大竹耕太郎投手(2017)
柳澤一輝 投手(2017)
小島和哉 投手(2018)
岸本朋也 捕手(2018)
宇都口滉内野手(2018)
加藤雅樹外野手(2019)
【慶應義塾大学】
高橋佑樹 投手(2019)
岩見雅紀外野手(2017)
柳町 達外野手(2019)
郡司 裕也捕手(2019)
【立教大学】
田中誠也 投手(2019)
山根佑太外野手(2017)
藤野 隼大捕手(2019)
【法政大学】
熊谷拓也 投手(2017)
長谷川裕也投手(2017)
菅野秀哉 投手(2018)
森 龍馬外野手(2017)
中山翔太外野手(2018)
大西千洋外野手(2018)
【明治大学】
齋藤大将 投手(2017)
水野匡貴 投手(2017)
竹村春樹内野手(2017)
逢沢崚介内野手(2018)
越智達也外野手(2018)
森下 暢仁投手(2019)
【東京大学】
まずは東大より宮台投手。当初はドラ1候補といわれていましたが、怪我の後フォーム改造にとりくむも制球が安定せず、今回は防御率も下から数えた方が早いという結果となっています。投げる球がとにかく真上に行くかバウンドしてるかというほど抜け球が多く、とても即戦力とはいえない状態になっています。
【早稲田大学】
大竹選手は去年より成績を悪化させており、今回2試合のみの登板、それも先発でなく中継ぎとしてでした。成績こそいいですが、求められていた選手像とは違う現状はスカウトがどう評価するでしょうか。
柳澤選手はノーワインドアップで常時140中盤のストレートを投げる右腕。早川・小島選手がローテを守る中でこの柳澤選手は実績が物足りないのが現状です。調子の波で制球が大きく変動してしまうようで、とにかく変化球が低めに抜けてしまうことが多々ありました。悪いときは牽制球も安定しないという選手で、調子次第の計算しにくい選手のようです。ノーワインドアップながら球速があるので、下位で中継ぎ候補として獲得、もしくは社会人でプロ入りを狙いといったのが濃厚です。
小島選手は飛出た変化球を持ち合わせているわけではありませんが、大きくはずれない制球と変化球で打たせてとるピッチングでした。右打者には変化球多投、左打者にはストレートで押していくといったもので、とにかく打者が狙い球をしぼれず打ち損じる場面が多く、抜け球はそれなりにあってもそれを見逃してしまうために試合を作れている、といった投手だなと感じました。
宇都口滉選手はセカンド起用がメインの俊足巧打型。出場実績もまだ少ない選手ですが、守備がいい。難しいバウンドを体が崩れながらつかみ、体が流れたままきっちりファーストに返球できる守備は魅力的でした。また走塁技術も持っており、盗塁面では少しスライディングがオーバーしてしまうところがありましたが、本塁では上手くタッチを潜り抜けるなど、スーパーサブとしての魅力をみせていました。社会人に進んでそこでさらに実績を積んでドラフト候補になるかもしれません。
岸本選手は下位起用が多い捕手。173センチと小柄ながら打撃とスローイングが売りのようです。一方で10試合起用で失策2と守備面では課題を残しており、現状では指名にこぎつけるには厳しいかもしれません。
加藤選手はなんですかあれは、本当に2年生なんですかあれ。スイングの振りぬき方がまさにスラッガーのものでした。「あら?これはセンターフライかな?」と思ったら伸びて伸びてフェン直なんて当たり前という。上手く変化球を引きつけて長打にする打撃力に、とっさの走塁判断の良さも目につきました。1位候補に十分に乗れるレベルだと思います。
【慶應義塾大学】
慶應は加藤選手(=16年広島1位)におんぶにだっこだったから大変という噂は聞いていましたが、現在の先発を見ると関根(1年)高橋(2年)がメインという惨状。上級生何してるの・・?
高橋選手は今期の選手で例えるなら球速を落として制球を上げた秀岳館・川端選手のような投球内容です。オーバースローに近いフォームから落差の激しいカーブとスライダー、そして外角ぎりぎりにストレートを投げ込む。時々高めに抜けてそれを引っ張られるといったものでした。球速があるタイプでないので、高めに抜けるとヒットにされやすいようです。
岩見選手は打撃以上に気になっていたのは守備。レフトであるためあまり守備は評価されていないことは想像がつきましたが、フライ地点で少しちょちょこ合わせるような場面がありました。同じスラッガーレフトなら立教・山根選手のほうが動きはよいかもしれません。また本塁への返球もチョコチョコあわせた無駄な動きがありますし、送球もスピードはあるんですが精度面では今ひとつでした。
そして打撃はやっぱり変化球への対応はまだ完璧ではなかったです。というよりあの打ち方でどうやって変化球に対応できると思ったのだろうか。ただ手が届く範囲の球を振ってるような打ち方です。パワーが規格外だが、そもそもパワーが生かせるほどの打撃ができていないのです。
清水選手は178センチの中型野手で岩見選手とともにクリーンナップを担います。ファーストの右投げ左打ちのため、現状では指名は厳しいところですが、打撃の柔らかさとパワーは魅力的でした。せめて外野が出来れば可能性が出てくるのですが。
柳町選手はとにかく守備範囲が広い。レフトの岩見選手があまり守備が上手くないのもありますが、レフト寄りの深い当たりを追って追ってぎりぎりキャッチというファインプレーも魅せていました。打撃面に関しては、まだまだバットに振らされてるようなフォームですが、当たればHRになるパワーはすでに上位候補として注目株の一人となっています。2年生でもあるためこれからの選手ですね。
郡司選手は2年生捕手ながら打率3割3HRとすでに打撃で結果を残している注目捕手です。甘いところをきっちり振りぬける打撃はスラッガーとしての片鱗を見せ付けています。ただし捕手としての能力では送球精度に課題があったりとまだまだの部分が目立ちます。
【法政大学】
森選手については、外野手と記載していますが、六大学公式HPでは内野手登録されています。これまでサード起用される場面がありましたが、今期はレフト起用が大半であるため外野手として記載しています。サードが出来るなら指名候補に挙がれますが、打率3割以上でも単打が多いためレフトでは指名は厳しいところです。
中山選手はレフト/ファーストの大型選手。2HRとスラッガーとして片鱗は見せていますが、三振率が20%を超えておりそこが気になるところ。
菅野選手は長谷川選手とともに先発ローテを守る長身右腕。変化球のキレが抜群の選手で空振り、カウントを取れる変化球を持っています。一方でストレートは高めにつけることが見られました。
投手とはいえストレートに完全に振り遅れている場面も多かったため、打撃センスが期待できるタイプではないようです。
長谷川選手はアンダースロー先発。常時120後半と球速は物足りないですが、アンダー独特の浮き上がるような球筋は打者にとっては脅威となっていました。制球もよく内角に攻められるのが強みのようです。実績が少ないため社会人に進んでそこでプロを狙う道を歩むと予想されます。
【立教大学】
立教のエースは19年候補の田中誠選手と手塚選手。この二人が先発を守っています。
田中選手は2年生ながらダイナミックなフォームから球速以上のストレートに大きく変化するカーブとスライダー、さらになかなかの制球とすでに上位候補の片鱗を見せています。ただ変化球が変化しすぎて大きくはずれてしまいカウントを悪くする場面もありました。緩い変化の球を操れるようになればもっと化けると思います。
4番の笠松選手はこれまで打率1割台と低迷していましたが、今季は打撃成績で上位を収めています。一方で守備課題は治っておらず、普通のゴロなのにかなり怪しいスローイングが多々見られました。内野でこの守備レベルだと指名は・・・よくて下位でしょうか。
5番の山根選手は慶大・岩見選手のような打撃特化型外野手。ただどちらかといえば中~長距離バッターに見えます。パワーとスイングはさすがですが、まだまだ堅さも目立ちます。岩見選手よりも守備などの動きはよいのですが、打撃の荒さがありました。指名については・・・レフト起用が多いため下位でならといったところでしょうか。
藤野選手は春からスタメン捕手として起用されている2年生。打率3割に1HRと結果を残していますが、一方で三振率が高いです。外の同じような球に空振りを繰り返していたので、打率がよくても下位打線なのはそこが理由でしょう。捕手能力としては田中投手の抜けた変化球をうまく防いでおり、捕手としての評価も上々だと思われます。
【明治大学】
齋藤選手は高いところから一気に腰を落とすサイドスローで、平均130前半ながら見た目以上の速さに差し込まれる選手が見られました。特に左打者の膝の高さに投げ込めるコントロールは脅威ですね。ただ課題として挙げられていたスタミナ不足は健在のようで、5~6回を超えたあたりから失点が増えています。短いイニングならキレッキレなんですが・・・
竹村選手は、守備はさすがですが打てなさすぎなのでさすがに指名にかかるのは厳しいです。打てそうな雰囲気なのに、ことごとく打ち損じるという典型的な打てない内野手。肩もそれなりに強い程度なので、打撃課題がネックですね。
逢沢選手については、長打こそ少ないですが守備範囲の広さと好走塁が見られました。中型選手であるため、もう少し長打が増えないと指名は厳しいかなという感じです(10安打中8本が単打)長打もどちらかというと足で勝ち取った長打でしたし。
森下選手はU-18にも呼ばれたドラフト上位候補でしたが、体が細いということで大学進学を選んだ選手。1年次は骨折で出場が少なかったそうですが、今回は明治で先発ローテを守っています。ストレートの伸びはさすがのものを持っていますが、セットポジションになると制球が乱れていました。
以上で17年選抜の振り返りを終了します。今回は打高投低となりましたが、それは投手に体が出来上がって1~2年生が多かったのも一因と思われます。そのため打撃成績を鵜呑みにしないほうがよいかもしれません