読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

戦力外から1軍便利屋に。巨人・吉川大機選手がこれから生き残るには

 巨人は14日、中日を戦力外となった吉川大幾内野手(22)の入団を正式発表した。背番号は68。 

 東京・大手町の球団事務所で記者会見を行った吉川は「1度死んだ身。どうせだったら、思い切ってやろうという思いで(巨人入りを)決めた。自分は一番下(の立場)だと思っている。日本一を目指すチームの力になれるようにしたい」と語った。

 秋季キャンプが行われているジャイアンツ球場で原監督も「若くて可能性を持った、まだまだ伸びしろのある選手。ピュアな気持ちで野球に取り組むこと」と期待を寄せた。

 同内野手は10年のドラフト2位でPL学園(大阪)から中日に入団。同じ道を歩んだ立浪和義氏が現役時代に背負った背番号3を継承し「立浪2世」として注目を集めていた。

中日戦力外・吉川巨人入り発表「1度死んだ身…思い切ってやる」― スポニチ Sponichi Annex 野球

 

 

 

 

 

 

 【吉川選手のこれまでの経緯】

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引用:Gフォト|読売巨人軍公式サイト

 10年にドラフト2位で入団し、立浪2世の名を与えられるほど期待された内野手の一人でした。しかし2軍での練習態度の問題、そして結果を残せず2軍暮らしが続いたことなどから14年に中日を戦力外となるも、同年に巨人が獲得。

 当初は代走・守備固めでの起用がメインでしたが、そんな吉川選手を一気に有名にしたのが15年6月4日の対オリックス戦。マイコラス選手の完封がかかった試合でしたが、1-0で迎えた9回に1アウト満塁でT岡田選手に打席が回り大ピンチ。岡田選手にレフト線のライナーを打たれ、抜ければ逆転確実の当たりでしたが、これをサード吉川選手がダイビングキャッチ→咄嗟にサードベースを踏みアウト→ファースト遠投のッダブルプレーで勝利し、その名を知らしめました。


マイコラス来日初完封、幕切れは吉川大幾超ファインプレー

 

 その後同年8月4日のヤクルト戦で体調不良の坂本選手に代わりショートでスタメン出場。4打数2安打1打点と結果を残しました。その後も横浜戦でセカンドファインプレーでダブルプレーを取り勝利に導くなど、15年は47試合60打席数56打数14安打4打点で打率.250となりました。

 それからは守備能力と高さと足も速いため、主に守備固め兼代走の便利屋枠で1軍起用されています。

 

 

【吉川選手の武器】

【内野すべてを安定して守れる守備力】

 吉川選手が高く評価されているのはその守備力。セカンド・ショート・サードすべてを安定して守れる守備能力は高く評価されています。

 内野すべてを守れる若手の小兵タイプの選手は、山本選手・増田選手・辻選手などが候補となりますが、これらの選手と吉川選手の大きな違いは「すべてのポジションの守備が安定していること」です。特にショートの守備固めにも起用できる利点は大きく、フル出場が多い坂本選手を休ませるために下げた後に、守備力があまり落ちない選手が控えていることは大きな助けとなっています。そのため吉川選手の起用タイミングはマギー選手の代走からサード守備。もしくは坂本選手が下がったあとのショート起用が大半です。

【ショートを守れると安定して守れるの違い】

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引用:読売巨人軍公式サイト

 「同じ内野を守れてパンチ力のある山本選手や、粘れる辻選手のほうがいいのではないか」という声があるのに、なぜ吉川選手が起用されるのか。確かに上記の選手はショート守備についたことはあるものの、山本・若林選手などはショート守備でエラー連発するなど守備固めは厳しく、増田選手はショートは守れるものの、サードセカンドが怪しい。辻選手も長い間ショート起用されておらず、内野全てが安定している吉川選手はベンチ枠が限られる一軍において、使い勝手のよい選手となっています。

 

【使い勝手はよい選手だが、安泰ではない】

【致命的な打撃成績】

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引用:読売巨人軍公式サイト

 

 吉川選手の大きな課題は打撃成績の低さであり、便利屋止まりとなっている原因です。

 

巨人所属期間中の1軍成績(17年は1軍出場無し)

年度 試合 打席 打数 安打 打点 本塁打 四死球 三振 打率 長打率 出塁率
15 47 60 56 14 4 0 2 15 .250 .375 .276
16 50 56 51 9 1 0 3 14 .176 .176 .222
17 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
18 22 6 5 1 0 0 1 1 .200 .200 .333

 

 巨人所属の4年間で本塁打は0本。通算打率も.208とぎりぎり2割に乗っているという始末。そのため一点を争う場面での代走として使うには交代後の打線の打撃力の低下が問題となります。そのため点差が開いた場面でスタメンを休ませるための守備固めに留まっており、幅広い起用が出来ないことが課題となっています。

 【戦力外からの入団と出身校の問題】

  同じ成績、年齢の選手なのに戦力外になるタイミングが異なることがあります。そこに関係してくるのが入団経緯と出身校です。

  例え成績が下降して二軍生活が長くなった選手でも、ドラフト上位やFA選手はある程度猶予が与えられます。一方で下位や戦力外獲得選手というのは、成績が伴わないとあっさり首を切られます。これは元々の期待値の違いもありますが、上位やFA選手をすぐに切ると、今後の選手獲得にも影響を及ぼすからです。  

  そして吉川選手は戦力外獲得であり、残念ながら切られやすい立場の選手ですが、下位指名でもドラフト指名常連校の場合、安易な戦力外は出身校から指名や挨拶拒否に繋がる恐れもあります。

  それでは吉川選手の出身校はどこなのか・・・それはPL高校です。かつてドラフト常連の強豪高でしたが、暴力事件や喫煙などあいつぐ不祥事で入学生が減少。現在は休部扱いですが、事実上の廃部状態となっています。つまり出身校の後ろ盾もまったく無い状態であり、非常に首を切られやすい立場となっています。

20日から選抜高校野球大会が始まるが、甲子園で春夏合わせて優勝7度を誇るPL学園高校(大阪府富田林市)の硬式野球部が、今夏の大会後に休部する。暴力事件など相次ぐ不祥事を受けて平成27年春に新入部員の募集を停止して以来、募集再開の予定はなく、OBの間では、事実上の廃部につながるとの危機感が募る。甲子園を何度も沸かせた強豪が、創部60年の節目に高校野球界から姿を消す可能性が高まっている。

甲子園沸かせたPL野球部、消滅の足音…創部60年に休部へ 相次いだ不祥事「事実上の廃部」OB危機感(1/5ページ) - 産経WEST

 

 

【吉川選手の取り組み】

【①:スイッチヒッターを断念】

  

自分を変えるオフ-。2015年に中日を戦力外となり、巨人に加入した吉川大幾内野手(25)は今季、移籍後初めて1軍出場ゼロに終わった。このオフは「両打ち断念」と「自立」を決断し、勝負の来季へ臨む。

 2年目の12年に右から両打ちに転向。「あこがれは松井稼頭央さん。少年の夢みたいな感じでずっと追い続けてきた」と、同じくプロ入り後に両打ちに転身し成功したPL学園高の先輩、西武・松井(楽天からこのオフに移籍)のあとを追っての挑戦でもあった。しかし1軍では通算135打数27安打の打率・200。自己最多の50試合に出場した昨季途中から熟考し、右打ちに専念することを決めた。

 最大の理由は走者を進塁させる右方向への打撃を徹底するため。左打ちでは打球を引っ張らなければならず、力任せな打撃につながっていた。だが、高校2年夏に大阪大会記録の1大会5本塁打をマークしたパンチ力の開花も期待できる。冬は右打者としてバットを振り込む。

 

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引用:読売巨人軍公式サイト

 

 吉川選手は相手投手によって打席を変えられるスイッチヒッター。これは相手のタイプを問わず起用できるメリットがありますが、両打ちは各打席の打撃練習が必要であり、普通の打者の倍の練習が必要となります。これは打撃に課題を持つ吉川選手にとってメリットとなる打法ではありませんでした。

 そこでバントやランナーを進める右打ちをしやすい右打者に専念。今期は打率.200とあまり好転していませんが、打撃内容の大きな変更は2~3年は見ていく必要があるもののため、それまでに成果を出したいところです。

 

【②:外野への挑戦】

 

◆オープン戦 巨人8-7ソフトバンク(13日・大分)

 巨人の吉川大幾内野手(25)が13日、ユーティリティーぶりを猛アピールした。

 ソフトバンクとのオープン戦(大分)に途中からレフトの守備で出場した。本職は内野手。1軍の試合で外野守備につくのは中日時代の13年以来5年ぶり、巨人移籍後初めてだった。巨人ではこれまでもファームでは外野で出場した経験があり、この日の試合前練習でも外野ノックを受けて準備し、無難にこなした。

 

 2軍では去年よりレフト出場することがありましたが、1軍では今年のオープン戦で初めて外野守備につきました。これは便利屋として1軍帯同しているため、外野での守備固めにも起用され、より便利屋としての価値を高めるための策であり、打撃面での影響はありません。

 問題は内野はともかく外野の守備固めはそこまで需要があるのか。現在の巨人外野スタメンはゲレーロ・亀井・長野・陽選手が入ります。ゲレーロ選手は守備が上手いほうではなく、亀井選手はスペ体質な上に高齢フルスタメンは体力がもたない、長野選手は膝の故障で守備が劣化し、陽選手は腰に爆弾持ちのため、守備固めは必須です。

 その上巨人の1軍経験の外野手の立岡選手は守備エラーが多く、中井選手も本職でないし、右の代打枠でもあるため、外野を安定して守れる守備固めの需要は他球団よりも高いものとなっています。

 ただ外野守備もレフトのみで、ライト・センターにはついていません。外野守備固めとしての需要を高めるには、センター・ライトにも起用できることが必須となります。

 

 

【総評】

 今は便利屋として確固たるポジションを得ていますが、打撃の課題がある以上、吉川選手なみに守備ができて打撃能力が上の選手が出てくれば、あっという間に危うい立場となります。

 守備型内野手は即戦力として獲りやすいポジションで代わりの選手が台頭しやすいため、打撃面の向上が求められます。