決勝の先発を任されたのはJFE東日本に入社2年目の本田健一郎だった。1メートル70の小柄なうえに童顔。打者への威圧感はまったくない。そんな本田が胸に刻んでマウンドに上がった言葉が、須田幸太から言われた「自分のピッチングをしろ。自分を信じて投げれば大丈夫だ」のアドバイスだった。
須田が古巣に戻って本田は多大な影響を受けた。「グラウンドはもちろん、私生活でも勉強になります。試合のある日は終わると、寮(千葉市)の近くにある温泉に須田さんと行って、そのあとご飯がルーティーンなんです。そのときに野球に対する姿勢とか話を聞いて刺激を受けています」と話した。5回まで2失点と踏ん張った。6回の投球練習中に足がつって連打を浴び降板したが、役目は果たした。「須田さんがきのうも4イニングを投げているし、1回でも1アウトでも取ろうと投げました」と足がつってからも2打者に対した根性は、須田を少しでも短いイニングで投げてもらおうという思いだけだった。
春から須田は本田に対して「オープン戦でいくら勝っても褒めないからな。都市対抗の舞台で勝ったら褒めてやる」と言い続けてきた。優勝という大舞台で見事勝ち投手となった右腕に須田は「勝ちましたね。きょうは褒めます。褒めてあげます」と約束を果たした可愛い後輩に目を細めた。
本田にとって初めての都市対抗。「抑えられたし、自分でも自信になりました。野手や監督から、大事な試合は本田でと言われるようもっと頑張っていきたいです」
須田と過ごした都市対抗での5試合はすばらしい財産となった。橋戸賞を手にした須田の姿を2年目右腕はしっかりと目に焼き付けていた。
【本田選手の紹介】
170センチ70キロ 右投げ左打ち
変化球:スライダー・カーブ・チェンジアップ・シンカー
解禁年:2019年
セットポジションから足を上げあまりタメを作らず、腕を折りたたんで大きく振りかぶらないフォームから最速150キロ、常時140前後のストレートを投げ込む右腕投手。ストレートのほかにも縦の変化の大きいスライダーに緩い球速のカーブ、小さく曲がるチェンジアップ、そして一瞬浮き上がるようにして一気に落ちるシンカーをメインに投げ込んでいきます。
決して平均球速が速いほうではありませんが、同じ腕の振りで投げられるため芯に当てた当たりが少なく、変化球でも安定してストライクが奪えています。
当初は打ち込まれることもあってかあまりスライダーを使いたがらなかったものの、日本代表合宿にてコーチにスライダーの試投を提案され、そこでスライダーの回転数の高さと打者が仰け反る姿を見て決め球として使うことを決意。先発として大きく飛躍することとなりました。
チームでは主に先発として起用。都市対抗では3試合に登板し16イニング9被安打3失点防御率1.68と好投しています。
2018/6/2 本田健一郎 (JFE東日本) 新加入 南関東予選/Honda戦より
【指名への課題】
左打者については縦のスライダー、右打者には浮き上がった後に内に落ちるシンカーがありますが、あまりインコースへ投げたがりません。投げるボールも見送られやすいカーブをたまに投げる程度で、基本は真ん中からアウトコースで勝負しています。
また球数が増えてくると変化球の精度が目に見えて落ちており、変化量自体は変わらないものの、変化が早すぎて投げた瞬間にボールとわかる球が増えています。特にクイック時は抜け球の頻度が上がっており、5回以降のランナーが出た場面は連打を打たれています。ストレートも高めに抜けてしまうことが多くなっており、先発として起用されても6イニング以下で降板しています。
投球内容としては絶対的な球で打ち取るタイプでなく様々な球種で躱していくタイプのため、変化球のコントロールが悪化すると試合を組み立てられなくなります。
【指名順位予想】
現状では先発よりも中継ぎとしての評価となります。ただ中継ぎとしても勝ちパターンでなく、回跨ぎができる6~7回の繋ぎとしての役割やロングリリーフとしての起用となります。
変化球は全体的に大きく乱れずまとまっているため、スタミナの課題さえなんとかなれば裏ローテ候補として先発起用も見込めます。このため指名順位としては先発ローテが厳しい時に谷間に投げさせられるイニングイーターの中継ぎとして5~6位が指名順位となります。