「3~5年後を見据えた指名をする」という言葉を信じ、若返りドラフトを期待したファンを絶望に叩き落したドラフト指名。小林選手を信用していない、育成能力がないから即戦力をとったなど、多くの声が挙がっています。
ならばこのドラフトにはどのような意図があったのか、それを考えていきたいと思います。考えていくのは主に4つとなります。
①:高卒指名が少なかった原因
②:大卒・社会人捕手4人指名の意図
③:大卒・社会人内野手大量指名の意図
④:中継ぎ指名の少なさの原因
そして4つの問題には以下の7つの原因で考察していきます。
【原因①:高卒上位候補のプロ志望未提出続出】
【原因②:18年のドラフト候補の傾向】
【原因③:1軍の左の長距離打者不足
【原因④:捕手大量戦力外・3軍創設による必要捕手数の増加】
【原因⑤:中型選手偏重指名からの脱却】
【原因⑥:坂本選手のショートとしての限界】
【原因⑦:16年大量投手指名の弊害】
【原因①:高卒上位候補のプロ志望未提出続出】
やはり一番気になるのは高卒指名が少なかったこと。現在の巨人は20代前半の有望株が少ないため、大量の高卒指名が予想されていました。
しかし実際は支配下では8位の湯浅選手のみ。1位では高卒の清宮・村上選手を狙いましたが、結果として大卒の鍬原選手となりました。
原因の一つはやはり高卒上位候補がことごとくプロ志望を出さなかったことです。
今回巨人が欲しかったのが打てる高卒捕手。そして左のスラッガーでした。しかしスラッガー捕手だった古賀・猪瀬・篠原選手など、数多くがプロ志望を出さず、村上選手に指名が集まる原因となりました。ただださえ不作の年にさらに不作になったポジションを無理に埋めるよりも、ある程度選手が揃っているところをきっちり補強し来季に備える方が無難な戦略となります。
【原因②:18年のドラフト候補の傾向】
来年の18年ドラフト候補は高卒・大卒・社会人全体的に豊作という当たり年。
ここに書き上げると長文になるほどまんべんなく上位候補がそろっており、18年に豊作部分をきっちり補強することが求められます。
そのため今季は大卒・社会人で地盤硬めを行い、来季に備えた形となります。
【原因③:1軍の左の長距離打者不足】
今季の獲得選手が批判される原因としては、2・3位を社会人捕手で消費し、④~6位が大卒・社会人内野手という偏重指名だったこと。しかしこの指名を別の見方からすると、その意図が読み取れます。
それは「即戦力の左野手の補強」ということです。今季は左のスラッガーが不作年。特に大卒・社会人は不作であり、慶應の岩見選手は兵庫の田中選手も右のスラッガーでした。
その中で3位指名のNTT東日本・大城選手と5位の日立・田中選手は共に打撃が評価された打撃型野手。さらに左打者でした。現在の巨人の左打者で長距離打者なのは高齢の阿部・亀井選手のみ。若手の左打者は吉川尚・重信・辻・田中・橋本選手と数は少なく、大半が俊足巧打・中距離打者が大半であり、左の打撃型選手の獲得は急務となっていました。
そのため大型スラッガーとして注目された大城選手。打撃評価上位候補の田中選手。そして両打ちながら左打席では本塁打も記録する若林選手。こうみると左のスラッガーを補強したかった意図が見て取れます
【原因④:捕手大量戦力外・3軍創設による必要捕手数の増加】
なぜ捕手4人の同時指名を行ったのか、多くの人が疑問に思った点だと思います。それについては、ここ2年の巨人捕手の異動について確認が必要となります。
相川選手→現役引退
実松選手→戦力外
加藤選手→戦力外→現役引退
鬼屋敷選手→戦力外→現役引退
河野選手→背番号降格
松崎選手→自由契約
小林選手(育)→戦力外
なんと2年で7名の捕手がいなくなっています。松崎選手は自由契約ですが、来年危ういことは確かです。3軍を作ったことで必要捕手数も増えており、今季は3軍で戦力外濃厚でDHメインだった鬼屋敷選手や、フィールディング評価の低かった松崎選手が捕手をしていた時もありました。そのため今季4名獲得により以下のように捕手を組むことができるようになりました。
小林選手→1軍正捕手
宇佐美選手→2番手捕手兼ファースト。来季の捕手内容次第ではコンバート
大城選手→3番手捕手兼左の代打。宇佐美選手コンバートの場合2番手。
岸田選手→即戦力とは見られていないため、2軍で田中選手とともに経験値を積ませる。
田中選手→2軍正捕手兼1軍捕手次第では昇格
高山選手→去年同様3軍。ただ課題の打撃は改善できておらず競争の形に
広畑選手→線の細さをスカウトからも指摘されており、3軍で体作りし後半から
小山選手→実戦の少なさが課題のため、高山選手と併用
このように1・2・3軍で捕手を併用できるようになりました。捕手はポジションの中でも特に負担の大きいため、併用し負担を分散しなければ故障にも繋がります。
【原因⑤:中型選手偏重指名からの脱却】
4位指名の北村選手は181センチ85キロ。7位の189センチ95キロ。育成1位の比嘉選手は180センチ82キロ。2位の山上選手は183センチ75キロ。田中選手も183センチ、8位の荒井選手は190センチ98キロと今季は大型・長身選手の指名が目立ちました。
これまで巨人の指名、とりわけ育成は中型の俊足巧打型が目立ちましたが、今季は即戦力以外は大半が180以上の選手です。これら大型選手で下位・育成まで残ったのは即戦力とはなりえない大きな課題を持っているからであり、育成に時間がかかるタイプとなります。そのため即戦力と素材型をそれぞれとり1軍を整えつつ大型選手を揃え俊足巧打コレクションからの脱却をはかっています。
その証拠に今季は育成で独立リーグからの指名0.独立リーグはどうしても22歳以上が多いため、育成も高齢化が目立っていました。育成の本来の目的は時間がかかり支配下では難しい選手にチャンスを与えじっくり育てる余裕を与えること。そのため年齢の猶予がある高卒指名が求められました。
【原因⑥:坂本選手のショートとしての限界】
引用:解説陣がみた巨人・坂本勇人の打撃不振 (ベースボールキング) - Yahoo!ニュース
巨人歴代最高ショートとして評価される坂本選手も来年で30歳。負担の大きいショートでは1年間通して出続けるのは負担が大きく、8月から疲れがピークに達し、明らかに本来の打撃が出来ていませんでした。
それでも坂本選手ショートにこだわった理由は監督の意気地もありましたが、坂本選手が抜けることで打線の迫力が大きく落ち込むためです。他の若手ショートは吉川尚・山本・増田選手など、巧打型が多く、坂本選手が抜けたクリーンナップを埋める長打力を持ち合わせていません。
坂本選手の調子が落ちてスタメンを降ろす必要が出た際、坂本選手ほどでなくともその打撃力をカバーできる打撃を持った選手が必要でした。その候補が大城・田中・若林選手となります。
さらに腰痛持ちの坂本選手がショートコンバートとなるのもそう遠い話ではありません。そのときに吉川選手をショートとするにしても、他の内野に打撃力を持った選手が必要となります。
【原因⑦:16年大量投手指名の弊害】
今季の1軍の中継ぎ酷使をみて誰もが「今季は中継ぎをドラフトで獲得するな」と予想しましたが、蓋をあけてみれば1位の鍬原選手が中継ぎ候補になりえるくらいで、投手1名指名という偏りでした。
岡崎スカウト部長は「16年は投手大量指名だったため、バランスをとった」と語っていますが、16年獲得は畠選手=先発。谷岡選手=高卒社会人素材型。大江・高田選手=高卒。リャオ選手=超素材型で、中継ぎ即戦力は池田選手のみ。2年で即戦力中継ぎ1名だけという極端な補強となっています。
実松選手戦力外で支配化枠がさらに空きましたが、現在の育成選手で支配下候補となるのは成瀬選手のみであり、育成支配下による補強は考えにくく、金銭を含めたトレードもしくはFAが予想されます。ただ17年投手でCランクで獲得できる中継ぎは少なく、宮西・増井選手ともに人的補償が必要であり、山口・森福選手のダメージが大きく、再びFA大量獲得は厳しいものとなっています。
つまるところ中継ぎ指名の少なさについては編成陣が無能だったということです。
【総評】
原因1~5を踏まえ、支配下・育成指名選手の狙いを振り返ります。
1位・鍬原選手=マイコラス選手次第で先発・中継ぎ両面での起用
2位・岸田選手=29歳の小林選手の後任。素材型としての指名
3位・大城選手=左の1軍スラッガーとしての指名
4位・北村選手=ポスト村田選手。大型サードとして指名
5位・田中選手=左の中長距離打者として指名。坂本選手を休ませた際の打撃力の補填
6位・若林選手=1軍でのサード起用・守備固め。スイッチで場面に応じた代打
7位・村上選手=中型の多い外野の中で大型外野手の補強
8位・湯浅選手=重信選手代走起用脱却のための代走の切り札として育成
育成
1位・比嘉選手=内野の若返り。左の打撃型選手の獲得
2位・山上選手=大型投手。育成指名からの先発ローテとしての期待
3位・笠井選手=身体能力型のロマン枠
4位・田中選手=コンバートからの伸びを期待した指名。山上選手同様
5位・広畑選手=3軍捕手の補充。素材型として期待
6位・小山選手=実戦の少なさが課題ながらも高山選手の競争相手
7位・折下選手=打てる内野として指名。巧打型内野からの脱却
8位・荒井選手=ロマン枠の大型外野手。戦力になれば大きい枠