17日に1軍より一足早くイースタン公式戦が開始され、巨人は黒星スタートになるも高卒2年目の大江選手が西武打線相手に7回1失点と好投しました。
もちろん1軍の結果も大事ですが、一方で2軍がどのように結果を出せるかで今後のチーム事情も変わってきます。今回はそんな巨人2軍の今季の構想と期待を解説したいと思います。3軍については長くなるのでまた別記事で行いたいと思います。
【今季の2軍は前年と何が変わったのか】
まずは2軍のチーム事情が前年とどう変わったのか。そこから話したいと思います。大きく変わったところは主に2つとなります。
①中堅層の大量戦力外
②3軍の試合数削減
【①中堅層の大量戦力外】
17年はベテラン・中堅を含めかなりの人数が巨人を去っており、人的補償・退団も含めると22名もの選手となります(育成再契約は含めず)
高木勇人投手(28)→野上のFA人的補償で西武移籍
マイルズ・マイコラス投手(29)→退団→カージナルスと2年契約
ギャレット・ジョーンズ外野手(36)→退団
片岡治大内野手(34)→現役引退→2軍内野守備走塁コーチ
松本哲也外野手(33)→現役引退→3軍外野総合コーチ
藤村大介内野手(28)→戦力外→現役引退→「ジャイアンツアカデミー」コーチ
北篤外野手(28)→戦力外→現役引退→「ジャイアンツアカデミー」コーチ
江柄子裕樹投手(30)→戦力外→未定
乾真大投手(28)→戦力外→12球団合同トライアウト受験→BC富山
長谷川潤投手(26)→戦力外→巨人打撃投手
相川亮二捕手(41)→現役引退→野球評論家
堂上剛裕外野手(32)→戦力外→現役引退→巨人スカウト
※土田瑞起投手(27)→戦力外→12球団合同トライアウト受験
※大竹秀義投手(29)→戦力外→巨人打撃投手
※矢島陽平投手(27)→戦力外→会社員
※川相拓也内野手(26)→戦力外→12球団合同トライアウト受験
※高橋洸外野手(24)→戦力外→12球団合同トライアウト受験
※坂口真規内野手(27)→戦力外→12球団合同トライアウト受験→会社員
巽大介投手(20)→自由契約→育成で再契約
松崎啄也捕手(25)→自由契約→12球団合同トライアウト受験→未定
※成瀬功亮投手(25)→自由契約→育成での再契約
※田中大輝投手(25)→自由契約→育成での再契約
※マヌエル・ソリマン投手(28)→退団
別記事でも語りましたが、若手育成の上で問題となるのはベテランよりも1.5軍状態の中堅層選手となり、引退が見えてくる中で引退後のコーチ・球団職員を考え若手にコーチ指導を行う選手も増えるため、若手育成にとってマイナスとなるばかりではありません。昨今でいえば大江選手に対する杉内選手や、田中貴選手に対する相川選手などがその例となります。
自主トレやファームでは、相川から送球やバッテリーの考え方など多くを教わった。「長い間、1軍で捕手として活躍されてきた本当にすごい方。自分も目指していきたい」。先輩の教えを胸に、扇の要争いに殴り込む準備を整えている。
巨人・杉内俊哉投手(37)が今オフ、高卒ルーキー左腕の大江竜聖(りゅうせい)投手(18)と鹿児島・薩摩川内市内で合同自主トレを行うことが29日、分かった。1年目の今季は2軍でローテを守り、12試合4勝3敗、防御率2・30。来季のローテ入りが期待される左腕に「チームは田口を抜くぐらいの左腕が必要。直球も力があっていいものを持っている」と、球界きってのベテラン左腕が“第2の杉内”育成に力を注ぐ。
実際、去年戦力外となった藤村・堂上・松本・北選手は2軍ではスタメンに名を連ねた選手でした。コーチへの道筋を探るベテランと違い、中堅層にとって若手からスタメンを奪われる→戦力外となるため、同じポジションを奪い合う相手となり、若手の台頭を阻害する原因ともなります。その中堅が多数戦力外になったことで2軍スタメンの平均年齢層も若くなっており、若い選手を積極的に起用できるようになっています。
イースタン・リーグ
— スポーツ報知・巨人取材班 (@hochi_giants) 2018年3月18日
開幕2戦目
西武戦(G球場)スタメン
【西武】
7鈴木4呉2中田3戸川8愛斗D坂田9斉藤6金子一5水口P佐野
【巨人】
9青山6増田D亀井2宇佐見7石川3脇谷8村上4マルティネス5北村P坂本工
1軍においても村田選手を自由契約にしたことで岡本・田中俊太選手を起用できるポジションが空き、現在岡本選手はオープン戦4号を記録するなど一定の効果が出始めています。
【②3軍の試合数削減】
17年の3軍試合数は107試合もあり、海外・遠方への遠征試合も多かったため、移動時間が多く練習に割ける時間が不足していることがかねてからの課題でした。
しかし鹿取GM・江藤3軍監督の「育成選手は土台作りから時間がかかる選手が多く、これからは練習に重きをおく」という方針の下に試合数の削減が検討されました。
来季は、3軍の日程も大きく見直す。今季は109試合を行ったが、育成により力を注ぐため、試合と練習の比率を調整しながら、選手一人一人の土台作りに取りかかる。
「3軍にいるのは、これからの選手。体作りに力を入れていきたい。鹿取GMも(今季に比べて)試合数を減らしていくと話をしていた。練習の方に力を入れていけると思う。実戦も大事だし、練習も大事。練習の比重を高めながら、良い時間を過ごしていけたらと考えています」
18年は3軍試合数は56試合にまで削減されており、多くが小野路球場において練習となっています。この試合数は今後のスケジュール次第で増減する可能性はありますが、それでも半分にまで試合数は減らされています。
それでは3軍の試合数が減ったことで2軍にどのような効果があるかですが、それは「選手の入れ替えのしやすさ」です。
引用:【巨人】3軍1年中「死のロード」!72試合以上遠征&90試合 : 野球 : Quumu.com
これまでの3軍はその試合数の多さから2軍とは別地域にいることも多く、試合を成立させるために各ポジションの選手を一定数3軍に置く必要がありました。しかし3軍の試合数が減ったことで試合維持のために3軍に選手を置き続ける必要性も減り、2・3軍の選手入れ替えをポジションに限らず行いやすくなっています。
そのためか3軍スタートだった増田・村上選手が18日の2軍スタメンで起用されており、実績のある増田選手に対し、村上選手は1年目で素材型ながらも3軍で2試合9打数4安打長打2と結果を残し、早速2軍起用できているため前年よりも人材の流動性が増しています。
ここからは今季2軍のスタメンについて構想したいと思います。
【2軍投手陣について】
【先発ローテについて】
まずは2軍の今季先発ローテについて。1年間のローテを考えるなら以下のようになります。
大江ー高田ー坂本工(育)ーヤングマンーメルセデスー今村ー谷岡ー内海(大竹)
この中で期待されるのは高卒2年目の大江・高田選手と育成ながら先発ローテに入る坂本工選手です。
大江選手は期待の2年目高卒左腕。開幕カードを任されるなど首脳陣の期待の高さが伺えますが、チーム方針としては無理に昇格させて壊れる危険性を避けるため、早くても夏までは2軍調整の方向で進めています。
高田選手は大江選手と同期ですが、大江選手に比べると体が出来ておらず時間がかかるため、今季は先発しても5~6回の登板が主になるでしょう。また春ごろは先発でなく中継ぎとして登板させ、2軍選手に慣れさせていくところから始めローテに加わるのは夏ごろだと思われます。
坂本工選手は育成2年目ながらそのスタミナと馬力が評価され先発転向を果たした大卒投手。開幕2戦目を任され伸びのあるストレート、落差の大きいスライダー・カーブで三振を奪っていました。ただし変化球の精度には課題があり、甘いコースに落ちてしまうことがあることや、5回以降球速が落ちてしまうことなど、先発として支配下になるにはまだ時間がかかるようです。
しかし育成選手が将来的に1軍ローテの一人になってくれれば、それはチーム編成の上で非常にありがたい存在となります。先発候補というのは多くがドラフトの上位指名枠で消えてしまうため、他のポジションも補強したい場合に大きな足かせとなります。そこを育成選手が埋めてくれれば、クリーンナップ候補の上位野手や1年目からセットアッパーになれるような選手に枠を空けることが出来るためです。
【中継ぎについて】
次は中継ぎ、現状では以下のようになっています。
左:戸根・田中大・森福
右:宮国・アダメス・リャオ・山川・桜井
ここに森福を並べる悲しみ。三軍の試合が減ったことで2・3軍両方に帯同して出場試合を増やす選手も出てきます。
引用:読売巨人軍公式サイト
この中で期待するのは桜井・山川選手。桜井選手はオフに菅野組に帯同し、躍動感あるフォームからコンパクトなフォームに大きく変化しています。その効果もあってか課題だったクイックでも三振を奪えるようになり、一軍でも大崩れせず結果を残しました。まだ危なげな内容もあり、勝ちパターン起用は難しいですが、斉藤コーチは中継ぎ適性を評価しているため、助っ人二名に依存している勝ちパターンを支えて欲しい選手です。
引用:読売巨人軍公式サイト
山川選手は小柄ながら威力のある球を投げる投手で一年目からフル回転が期待されましたが、上半身のコンディション不良で前半は登板すらできずに終わりました。同年一位の高井選手に対し即戦力として期待されているため、今季は二軍登板を果たし、来年には支配下を狙いたい選手です。
【野手について】
【捕手】
捕手:宇佐見・田中・高山・岸田
捕手のキーマンになるのは宇佐見選手。同タイプの大城選手が予想外の活躍を見せるなかで、盗塁阻止率という大きな課題がある宇佐見選手は、出場機会のためにコンバートするのかどうかで他の捕手の起用も変わってきます。現在は捕手・ファーストを守っていますが、今後外野・サードを守るようになれば本格的にコンバートするとみていいでしょう。
もし宇佐見選手がコンバートとなった場合、1軍3番手をバランス型の田中選手と守備型の岸田選手で争う形となります。
【内野手】
左野手:脇谷・マルティネス・辻
右野手:北村・増田・若林・吉川大
こう並べると左野手の人材不足が目立ちます。内野手でキーマンとなるのは「安定したショート守備ができる選手」です。オープン戦・練習試合で露呈した坂本選手以外のショート守備の酷さ。北村選手・若林選手・山本選手はことごとくエラーを連発。山本選手は打撃面の成長がありますが、残り二人は二軍漬けになるでしょう。
引用:読売巨人軍公式サイト
辻選手もサード・セカンドを守ることが多いため、一軍便利屋枠を争うのは残る増田選手と吉川大選手となります。打撃なら粘りのある増田選手ですが、一軍でも安定した守備を披露し、外野も出来る吉川選手のどちらかに絞られます。1軍便利屋として君臨していた寺内選手の衰えが見え、このポストに誰が入れるか、特に吉川選手はもう後がない状況のため、なんとしてもこのポジションを獲得しなければなりません。
便利屋枠とは別に、単純な期待枠として挙げる選手は辻・北村選手の二人。辻選手はオープン戦で代打出場が多いものの、上手く変化球を広いとにかく粘る内容が増えています。ただセカンド・サードは田中・吉川尚・山本選手との競争があるため、左野手不足の外野に入り込みたいところですが、守備範囲が広いわけではないので強肩を活かしレフト・ライトのどちらかとなります
北村選手は久しぶりの大型内野手獲得であり、スカウト評では打撃<守備でしたが、蓋を開けてみればその逆でした。今季は2軍で守備・長打力を鍛え、サード本職として2~3年後に1軍登板を果たしたい選手です。
【外野手】
左野手:松原・重信・柿澤
右野手:村上・青山・和田
こちらも左野手不足感が拭えません。右は青山・村上選手という大型恵体選手がいますが、左は俊足巧打型が多くドラフトでの獲得が求められます。
この中で注目選手となるのは村上選手。7位入団で大型恵体ながら守備・走塁は1軍クラスと評価されるも打撃が課題だったロマン枠ですが、3軍スタートながらすでに2軍にも呼ばれ、教育リーグで1号HRも記録するなど大型野手としての片鱗も見せています。
現在巨人で不足しているライト・センターを守れる選手のため、村上選手が物になればドラフト戦略にも大きく影響します。陽選手が調子の波が激しく腰の爆弾もあり1年戦える選手ではないため、夏ごろから守備固め兼代走として少しずつ1軍に慣れさせていきたい選手です。
【総評】
去年までスタメンをつとめた中堅層選手を数多く戦力外にしたため、多くの選手はまだ未熟な発展途上選手であるため、イースタン優勝は難しいかもしれません。またイースタンの年齢・ポジションバランスもこれから調整していかければならないため、今年1年で有望株がどんどん出てくるということもないでしょう。2軍にとって今年は我慢の年になると思われます。