前回は巨人の外野手高齢化について過去10年のドラフトと他球団の指名傾向をみたうえで、ドラフトにおける外野手指名について書きました。今回は外野手と同様に巨人の補強ポイントとなっている中継ぎについて書いていきたいと思います。
【巨人の過去10年の支配下中継ぎ指名】
引用:読売巨人軍公式サイト
まず巨人が08~18年の間にドラフトで中継ぎを何名指名したか。ただ指名において先発であれ中継ぎであれ、獲得はあくまで投手です。外野手のようにポジションで指名されないため、アマチュア時代・入団後ともに中継ぎメインで起用されている選手とします。あくまで即戦力中継ぎなので高卒選手はいれません。また戸根選手のようにアマチュア時代は先発起用されていても、獲得後に中継ぎ起用がメインになっている選手を含めます。つまり桜井・鍬原選手のように当初は先発起用されていて、その後中継ぎに回された選手は含めません。
11年3位:沖データコンピュータ教育学院・一岡 竜司選手
11年4位:国学院大・高木 京介選手
11年6位: 東芝・江柄子裕樹選手
12年4位:大阪ガス・公文 克彦選手
13年2位: 日本大・戸根 千明選手
15年7位: 東海大・中川 皓太選手
16年3位: 東芝・谷岡 竜平選手
16年4位: ヤマハ・池田 駿選手
※16年7位のリャオ選手は即戦力中継ぎとは判断しがたいため除外します。
10年で9名。人数だけ見れば以外と多いものの、11年と16年が偏っているだけで、非常にバランスの悪いドラフトとなっています。現在の巨人は宮国・桜井・鍬原選手といった、元々先発として起用していたもののローテに安定して入れるほどの成績を収められていない選手を中継ぎに回したり、足りない左中継ぎをなんとかしようと裏ローテだった吉川選手を中継ぎに回したりと先発を削ることで中継ぎを補っています。このため2軍ローテを含め先発がぎりぎりといった問題が発生しています。
【他球団の中継ぎ指名人数】
それでは他球団は14~18年の過去5年でどれだけ指名しているのか。ここで挙げる選手はプロ入り後中継ぎ起用されている支配下指名の選手のみとします。結果一軍で未起用でも数に含めます。また獲得時に起用法が明言されていない選手については1軍・ファームでの起用で判断します。
【広島】
14年6位:JR東日本・ 飯田 哲矢選手
15年6位: ホンダ・仲尾次 オスカル選手
18年2位:九州共立大・ 島内 颯太郎選手
※17年3位・ケムナ・ブラッド・誠選手と7位の平岡 敬人選手はスカウトが次官のかかる素材型と言及しているため除外。
結果5年で3名、1年辺り0.6名となっています。
【ソフトバンク】
17年1位: 東洋大・甲斐野 央選手
17年2位:三菱重工広島・ 杉山 一樹選手
17年8位: 三菱HPS・ 奥村 政稔選手
※14年5位の島袋洋奨選手は指名当時イップスでスカウトも長い目で見ていくと言及しているため除外。17年2位の杉山選手は「短いイニングなら即戦力」というコメントがあるため服務。
【西武】
14年2位:平成国際大・佐野 泰雄選手
15年3位: 西濃運輸・野田 昇吾選手
15年5位: JR四国・南川 忠亮選手
16年5位:ホンダ鈴鹿・平井 克典選手
16年6位: 立教大・田村伊知郎選手
18年6位:セガサミー・森脇 亮介選手
【Dena】
14年4位:三菱HPS横浜・福地 元春選手
15年7位: 鷺宮製作所・野川 拓斗選手
16年4位: 広島経済大・尾仲 祐哉選手
16年8位: JR東日本・進藤 拓也選手
17年4位: JX-ENEOS・齋藤 俊介選手
17年6位: 石川MS・寺田 光輝選手
※現在リリーフの14年1位・山崎康晃選手は当初先発として起用→駄目でリリーフ転向で覚醒、指名当時は先発ローテーションとして期待しているコメントもあるため今回は除外。
結果5年で6名。1年辺り1.2名獲得しています。
【日本ハム】
15年3位: 東農大北海道オホーツク・井口 和朋選手
15年5位: 日本文理大・田中 豊樹選手
16年8位:新日鉄住金かずさマジック・玉井 大翔選手
17年2位: NTT東日本・西村 天裕選手 ( 投手
※15年7位・吉田侑樹選手、17年6位・鈴木遼太郎選手は先発として期待しているというコメントがあるため除外。
【ヤクルト】
14年4位: 香川OG・寺田 哲也選手
14年5位:伯和ビクトリーズ・中元 勇作選手
14年6位: ホンダ鈴鹿・土肥 寛昌選手
16年4位: 名古屋経済大・中尾 輝選手
16年6位: 相双リテック・菊沢 竜佑選手
18年5位: 新日鉄住金広畑・坂本 光士郎選手
18年7位: 九州共立大・久保 拓眞選手
※17年2位・大下佑馬選手と3位・蔵本治孝選手、8位・沼田 拓巳選手は先発ローテとして期待しているコメントがあるため除外。
【ロッテ】
14年6位:広島国際学院大・宮崎 敦次選手
15年4位: JR東日本・東條 大樹選手
15年7位: JR西日本 ・高野 圭佑選手
16年5位:九州三菱自動車・有吉 優樹選手
17年6位: ホンダ・永野 将司選手
18年2位: 日本体育大・東妻 勇輔選手
【阪神】
14年2位:新日鉄住金鹿島・石崎 剛選手
17年5位:九州三菱自動車・谷川 昌希選手
18年4位: ホンダ・齋藤友貴哉選手
【楽天】
14年6位:JR東日本東北 ・加藤 正志選手
15年5位: ホンダ・石橋 良太選手
16年4位: 大阪体育大・菅原 秀選手
16年5位:新日鉄住金広畑・森原 康平選手
16年9位: JX-ENEOS・高梨 雄平選手
17年7位: 石川MS・寺岡 寛治選手
18年4位: SUBARU・弓削 隼人選手
【中日】
14年8位: 徳島IS・山本 雅士選手
15年2位:東北福祉大・佐藤 優選手
15年4位: JR九州・福敬 登選手
17年1位: ヤマハ・鈴木 博志選手
【オリックス】
14年4位: NTT東日本・高木 伴選手
14年6位: JR東日本・坂寄 晴一選手
15年2位: パナソニック・近藤 大亮選手
15年4位: トヨタ自動車・青山 大紀選手
15年8位:ジェイプロジェクト・角屋 龍太選手
16年2位: 立正大 ・黒木 優太選手
16年5位: 日本生命・小林 慶祐選手
16年8位: 立教大・沢田 圭佑選手
18年3位: ホンダ熊本・荒西 祐大選手
18年6位: JX-ENEOS・左沢 優選手
【各球団の指名傾向を踏まえてのドラフト戦略】
最多はオリックスの11名。最小が阪神・広島・SBの3名となっています。巨人の場合は10年で5名のため、5年では4.5名と少なくはないものの、一番多い11年ドラフト3位の一岡選手は人的補償に、4位の高木選手は野球賭博で大きく道を逸れ、江柄子選手もいまいちぱっとせず引退となります。11年で現在も中継ぎとして安定して起用されているのは田原選手のみ。それもワンポイント止まりのため、指名数の少なかった他年の選手が勝ちパターンになっておらず、中継ぎ不足の原因となっています。
指名順位については多くの球団が4位以下で獲得しています。一方で6位以下になってくると社会人でも一年目から一軍フル稼働といった選手は少なく、起用されていても20試合以下で防御率は4点台以上と負けパターンとしても厳しい成績です。 このため中継ぎの獲得といっても、一年目から一軍起用したい選手は5位以上で、6位以下については選手がばててくる夏以降の入れ替え候補や、ワンポイント・即戦力でなく育成が必要なタイプと割りきっての獲得を見込んだ選手とすべきです。
各年の獲得数については1年に1名が平均的となっています。獲得数が多い16年は大卒・社会人投手の豊作年だったため下位指名でもある程度中継ぎを獲得できましたが、基本的に年に2名以上1軍即戦力は難しいと考えるべきでしょう。このため19年は4~5位で右腕中継ぎを1名。6~8位は素材型を1名獲得し、2軍で起用しながら先発・中継ぎどちらにも回せるよう育てていく形となります。2軍も先発ローテがぎりぎりで今年でローテの1人だった大竹選手が引退の可能性があるため、2軍先発要員の素材型も獲得する必要があり、中継ぎだけ獲得すればいいという状態ではありません。