＜センバツ高校野球：龍谷大平安2－0津田学園＞◇25日◇1回戦
津田学園は注目のエース右腕前佑囲斗（まえ・ゆいと＝3年）投手が4安打170球の熱投も、延長11回で力尽きた。試合中には、甲子園の魔物が前を襲っていた。
10回までスコアボードに「0」を刻んだ。2回に初安打を許すも、その後は9回1死まで無安打投球。ランナーがいない時は130キロ前後の直球も、走者を背負えば130キロ後半を連発するなどピンチでギアを上げた。4回1死二、三塁のピンチも自信の球を武器に、2者連続三振で要所を締めた。
異変が生じたのは試合中盤。前は「6回ぐらいから指がつりかけていて、少しずつ球に威力がなくなっていった」。つったのは球を握る親指、人さし指、中指の3本。マウンド上で、指を気にするしぐさも多く、つっては自ら治し…、を繰り返していた。これまで、こういう経験はなかったという。
試合は両チームともに「0」が並ぶ緊迫した展開。「メンタル面から疲れが出てきた。『自分の1球で試合が動いたらダメだ』という緊張感の中でやっていたので、すごく疲れを感じました」。チームの援護を待ちながらも、心身ともに疲労が蓄積していた。
9回、10回と1安打ずつを浴びるも、ピンチをしのいで迎えた11回。ここまで球数は137球。「体の開きがすごく早くなって、甘い球やボール球が多くなった。バッターに絞られるような感じになった」。2四死球で1死一、二塁から2年生の5番奥村真大内野手に左越え適時二塁打で初失点。犠飛も許してこの回2点を失い、粘りきれなかった。
現在、最速148キロを誇るが入学当時の最速は128キロ。自主性を重んじる同校において、1年秋から毎晩、白米を1・2キロ食べることを自ら義務づけた。体重は入学時から20キロアップの88キロに、球速も20キロ上がった。
終盤のピンチの場面で、ベンチの佐川竜朗監督（40）から交代の意思確認にも「自分が行く」と合図を送った。「自分がピンチをつくったから、しっかり抑えていこうという気持ちで」。エースの覚悟で、投げ続けた。
佐川監督は継投について「前に託していたので、代えづらかった。1点取られてから、さらにギアも上がったし、託そうと思った。最後まで投げ抜いてくれて、感謝している」。信じ抜いた背番号1に言葉をかけた。チームとしては「先を見据えたら（接戦の試合を）経験ができたのは良かった」と、収穫を口にした。
【前選手の特徴】
１８２センチ８７キロ 右投げ右打ち
変化球：スライダー・カーブ・フォーク
ノーワインドアップからくせが無く投げ込むフォームから最速１４８キロ、常時１４０中盤のストレートとスライダーが武器の右腕投手。球種の割合はストレートとスライダーがほとんどという投手ですが、ストレートは打者の手元で伸び、スライダーも縦に変化し落差を生み出しています。さらにこの２球種の投げるまでの時間や球速も微妙に変化させ、相手のタイミングを狂わせるといった投球術も披露しています。このためストライクを取りにくるスライダー待ちでありながら、なかなか打ちあぐねるといった場面も見られました。
以前は力任せだったストレートも徐々に改善しており、それに伴いコントロールも改善しました。コントロールもよいためこの２球種でストライク先行で相手打者を追い込んでいきます。まだフォームに粗がありながらも伸びがあるストレートにコントロールの良さから、伸び代の高さは高卒選手の中でも上位候補となります。
【指名への課題】
スライダー以外の変化球も投げていますがその割合は少なく、特にスタミナが切れてくるとストレートの割合がさらに増えてくるのが問題となります。やはりスタミナが切れてくるとスライダーが甘めに入るようになるためスライダーが使いにくくなり、かといってスライダー以外の精度が課題となっているため、変化球全体の精度向上が課題となります。
またフォーム自体もまだまだ荒削りな部分があるため、フォーム固めからじっくりと行っていく必要があり、非常に時間がかかる選手といえます。
【指名順位予想】
荒削りながらほぼスライダーとストレートだけで高い防御率を保有しており、恵体でもあるため高い伸び代が期待できます。コントロールは才能と称されるように、ストレートとスライダーのコントロールが非常に良いため、今後しっかりとフォームを固め他の変化球を鍛え大型先発として期待したい選手です。
ただ１位候補かといわれれば素材型としての要素が強いため、１位指名の可能性は低い選手となります。ただ高卒素材型についてはＢＩＧ４の４名を除くと上位指名候補は少なくなるため、２位～３位上位で消える可能性の高い選手となります。
