第101回全国高校野球選手権(8月6日から16日間、甲子園)の地方大会は9日、青森大会が開幕し、17大会で計109試合が行われた。群馬大会では今秋ドラフト候補で前橋商の144キロ左腕・井上温人(はると)投手(3年)が8回1失点と安定した投球を披露。初戦突破に導いた。10日は18大会122試合が行われる。
上州名物・空っ風。前橋商・井上が5回、6番・江原に投じた124キロのスライダーが鋭く内角をえぐる。風を切るような変化に、打者はボールが膝付近に当たりながらも思わず空振りした。三振。「スライダーに一番、自信がある。内角に腕を振って投げようと思った」。必殺の空っ風スライダー。井上は満足そうにうなずいた。最速144キロ左腕。金の卵を見ようと、ネット裏には9球団35人のスカウトが集結した。自己最長の8回を6安打1失点で6奪三振。「今日は70点。調子はあまり良くなかったけど、勝つ投球ができた」。直球は142キロを計測し、無四球投球。スライダーは2種類の変化があり、ヤクルト・橿渕聡スカウトグループ次長は「(5回の三振は)打者の予想以上に曲がった。フォームも奇麗で潜在能力がある。直すところもない」とうなった。
3月下旬に移転するまで前橋商のグラウンドは利根川の河川敷にあった。空っ風が吹けばボールが砂ぼこりで見えなくなったほど。そんな環境で鍛えた井上のバロメーターは「帽子飛ばし」。躍動感あふれるフォームで何度も帽子が脱げたが、115球の熱投に「8回を投げて自信がついた」と笑顔を見せた。
【群馬】前橋商・井上 空っ風スライダー「自信がある」9球団35人のスカウト驚き― スポニチ Sponichi Annex 野球
【井上選手の紹介】
174センチ68キロ 左投げ左打ち
変化球:スライダー・カーブ・シュート・チェンジアップ
ワインドアップから柔らかく肘を使って投げるフォームから最速144キロ、常時130中盤のストレートを投げ込む左腕投手。130中盤ながらキレがあり右打者が仰け反るほどのキレのあるストレートに加え、左打者のインコースで小さく曲がるスライダーと落差のある二種類のスライダーで攻めていきます。
小柄ながらもフォームの癖のなさと球のキレを多くのスカウトが評価しており、高卒左腕注目株の一人として挙げられています。まだ細さがあるが癖もなく直すところがないとまで述べるスカウトもおり、伸びしろを高く評価されており。
【指名への課題】
ストレートはキレはあるもののばらけ気味で高めに抜けることも珍しくありません。このため変化球のコントロールが頼みの綱となりますが、カーブのコントロールがあまりよくありません。特に左打者のインハイに抜けることが多く、球速の遅いカーブのため引っ張られやすく痛打されることが多々見受けられます。
アウトコースぎりぎりをつければ強力な球となりますが、反対側のバッターボックスに落ちるなど変化が大きすぎて見切られています。スライダーもストレートを見せ球にすることが効果があるタイプの変化のため、今後はストレートとカーブのコントロール改善が課題となります。
【指名順位予想】
大きく直すところがなくまだ体は細いながらも130中盤のストレートに大きな武器となるスライダーを持っているため、伸びしろが高く評価されます。一方あまり身長がないこと、コントロールはまだ要改善であることから上位指名の可能性はまだ低い選手となっています。このため指名順位は4~5位の下位指名候補。指名順位上昇の秘訣はやはりストレートのコントロールになってきます。これが大卒であればストレートのコントロールに課題となると指名漏れにもなってきますが、高卒は課題よりも武器評価が優先される傾向が強いため、十分に指名候補となってきます。