<高校野球埼玉大会:花咲徳栄9-0正智深谷>◇18日◇3回戦◇大宮公園
夏初先発で偉業達成だ。花咲徳栄の左腕、中津原隼太投手(3年)が9回を投げ100球、1四球、11奪三振、ノーヒットノーランの快投でチームを勝利に導いた。
「アウトコースに投げ分けられた。相手バッターがストレートに合っている感じがしなかった。常にピッチャー有利のカウントで進められた」と振り返った。
春の県大会準々決勝で東農大三に敗れたその日にスリークオーター気味からサイドに転向した。
「(抵抗は)ありましたけど秋春負けたので…」とサイドにすることに抵抗がなかったわけではない。しかし「しっくりきました。コントロールも安定するようになりました」とサイドに手応えを感じていた。
以前「今年は継投です」と語っていた岩井隆監督(49)は中津原の完封について「代えて打たれたらおれの責任になっちゃうから…責任回避をして全てお任せした方がいいな」とおどけたが、記録ではなく投手の動きや相手打線の動きをみてチームに何が最善かを見極めた結果が中津原の続投だった。
昨秋、今春ピッチャーで負けたと言われた。例年とは違う調整をした。体全体を使って投げられるように、腕を思いっきり振れるようにすることを目的に、遠投やブルペンで助走をつけて思いっきり投げる練習などを導入した。
5年連続出場へのプレッシャーもある中、縮こまらず腕を振り続けた。中津原は「腕を振れるようになった。持ち味のスライダーも良くなった。続けています」と遠投の効果を口にする。
最後のアウト後、ガッツポーズがなかったことを問われると「…」苦笑いを浮かべた。偉業達成よりもチームの勝利に安堵(あんど)した様子だった。
【中津原選手の紹介】
180センチ82キロ 左投げ左打ち
変化球:スライダー・カーブ・フォーク・ツーシーム
セットポジションから小さくステップし、横手投げからあまり力みを感じさせない腕の振りから投げるフォームで最速135キロ、常時130前後のストレートを投げ込む左腕投手。ストレートは120キロ台を記録することもありますが、それでも相手バッターは合わせられず空振りを量産しています。基本的にはストレートとスライダーをメインに、ストレートを狙った相手をフォークでうちとります。
もともとスリークォーターで投げ下ろすように投げるフォームでしたが制球が定まらず春の地方予選で3回2失点で敗退。そこで監督の勧めから腕を下すようなフォームに転向。
スライダーのキレとストレートの動きがよくなり夏の地方予選ではノーヒットノーランも達成しています。
【花咲徳栄】左腕エース 中津原隼太投手を中心とした投手陣 投球練習【2019夏 甲子園】
【指名への課題】
サイドスロー転向後本格的に試合起用されるようになったのが3年夏からであり、まだサイドスローとしての球種を確立できていません。左右によって使う球種がかなり偏っており、左であればストレートとスライダーのみ、右であればフォーク・ツーシームばかりという配球になっています。
低めに集められているうちはこの配球でも打ち取れていますが、スタミナが切れてくると低めに制球できなくなり、そうなると120キロ台の打ち頃の球となり痛打されています。
【指名順位予想】
まだフォーム変更後実績が少ないことや、今の中津原選手の評価は対左用の中継ぎとしてみたい選手となるため、そうなると高卒として獲得するよりも現在の投球スタイルを確立した即戦力として欲しい選手。このため理想としては中継ぎとしての起用に重視できる社会人へ進むべきです。育成指名を受け入れるかどうかと言われれば怪しいところであり、現状では指名漏れの可能性が高い選手となります。