3安打17三振で完封負けしたセンバツの屈辱から約5カ月。履正社(大阪)が因縁の相手・星稜(石川)を破り、春夏通じて初の甲子園優勝を果たした。

4番井上広大外野手(3年)がバックスクリーン左に特大の逆転3ランをぶちかますなど、星稜のスーパーエース奥川恭伸投手(3年)に11安打を浴びせて5得点。最高の舞台でリベンジを果たした。

   ◇   ◇   ◇

お立ち台で歓声と拍手を浴びる井上の目は、赤くにじんでいた。「やっと勝てたので、うれしい気持ちでいっぱいです」。チームの誰もが願った星稜へのリベンジを、4番らしく先導した。

屈辱を振り払う一撃に、井上は右拳を思い切り突き上げた。1点を追う3回2死一、二塁。初球だった。「打った瞬間確信した」。高めに浮いた奥川の宝刀スライダーを捉え、バックスクリーン左に突き刺した。今大会3発目、通算49号は千金の逆転3ランとなった。第1打席はカウント2-2からスライダーで見逃し三振。「2打席目もスライダーが来ると思っていた。狙っていました」。センバツ後テーマに掲げ練習してきた「対応力」の成果を、ここぞの場面で発揮した。

ソフトボールをしていた小5の時。自分でも驚くような大飛球を左翼に放った。走っても走っても打球が落ちて来ない。「気持ちいいなあ」。アーチストへの道を歩み始めた瞬間だった。王貞治がボールの中心から6ミリ下を打つと聞けば練習で取り組んだ。履正社入学直後の練習試合では市尼崎高の校舎の上にある照明にぶつける本塁打。推定150メートルの履正社の歴史に残る「伝説の1発」だ。