読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

読売ジャイアンツの過去のドラフトを評価する(2010年編)

 ドラフトにおいて会議後に大量に出されるドラフト採点。そのような記事に異を唱えるコメントとして「ドラフトは5年後に評価しろ」というものがあります。これは今回の巨人のように素材型ドラフトに振り切った場合、直後のドラフトでは評価のしようがなく、知名度のある選手をとった球団=高得点球団となりがちとなるためです。

 そこで今回はリクエストのあった、過去のドラフトについて評価したいと思います。今回はちょうど10年前となる2010年ドラフトを評価したいと思います。

 

 【2010年のドラフト市場】


早稲田大学 4年 大石 達也 投手

 2010年は投手豊作年であり、その中でも再注目候補だったのは早稲田大・大石達也と同じく早稲田大・斎藤佑樹選手。そして中央大の沢村拓一選手です。さらに故障により順位を落としていたものの、左腕注目株の佛教大・大野雄大選手や日本通運牧田和久選手と東京ガス美馬学選手と即戦力候補が多い年でした。

 また野手についても履正社山田哲人選手や智弁和歌山西川遥輝選手。大卒であれば 八戸大・秋山翔吾選手に 広島経大・柳田悠岐選手と日本代表に選ばれるような選手が指名された年と、実はこの年の上位候補たちが入団チームにおいて大きな軸となっています。

 

【2010年の巨人のチーム事情】

 ドラフト指名において重要となるのがその当時のチーム事情。09年の巨人のチーム事情を象徴する言葉は「投壊」です。これを表しているのが先発ローテであり、この年のローテは内海ーゴンザレスー東野ー藤井ー西村ーオピスポー朝井となっています。こうみるとなかなかのローテですが、問題はその成績です。

内海:27試合148(0/0)回11勝8敗防御率4.38

ゴン:25試合132(2/3)回5勝13敗防御率5.29

東野:27試合157(0/0)回13勝8敗防御率3.27

藤井:23試合122(0\0)回  7勝3敗防御率3.76

西村:14試合  73(2/3)回  4勝5敗防御率4.52

オピ:14試合  48(1/3)回  2勝3敗防御率5.21

朝井:10試合  49(1/3)回  4勝1敗防御率2.01

 

 5勝13敗防御率5点台のゴンザレス選手が表ローテという惨状。幸い中継ぎには越智・山口・マイケル・久保選手と揃ってはいたため,ドラフトの補強ポイントは即戦力先発でした。このため巨人は斉藤・大石・澤村選手を有力候補としていました。

 

    一方で野手は坂本・松本・小笠原・ラミネス・長野・阿部・高橋・脇谷・エドガー選手がそろっており、控えでも矢野・谷・鈴木選手と代打・代走も揃っていました。このため投手に比べ野手は即戦力は求められておらず、投手事情を踏まえドラフトの方針は投手中心指名となりました。

【ドラフト指名結果】

新人選手選択会議
順位 選手名 守備 所属 結果
1位 澤村拓一 投手 中央大学 入団
2位 宮國椋丞 投手 糸満高 入団
3位 田中太一 投手 大分工業高 入団
4位 小山雄輝 投手 天理大学 入団
育成選手選択会議
順位 選手名 守備 所属 結果
1位 和田凌太 内野手 広島工業高 入団
2位 岸敬祐 投手 愛媛マンダリンパイレーツ 入団
3位 福泉敬大 投手 神戸9クルーズ 入団
4位 荻野貴幸 内野手 愛知工業大学 入団
5位 財前貴男 内野手 エイデン愛工大OB BLITZ 入団
6位 成瀬功亮 投手 旭川実業高 入団
7位 川口寛人 内野手 西多摩倶楽部 入団
8位 丸毛謙一 外野手 大阪経済大学 入団

2010年度新人選手選択会議 (日本プロ野球) - Wikipedia

 逆指名に近い形ではありましたが、一位で澤村選手を獲得。さらに2位で故障により評価の落ちていた宮国選手も獲得。異なる高卒として田中選手。さらに素材型大卒選手の小山選手も獲得し、支配下は計4名指名となりました。

  目立つ点は育成選手の大量指名。2011年から三軍創設を予定していたため、三軍要員として多くの育成選手を獲得しました。

 

【現在から見るドラフト評価】

  この年のチーム事情を踏まえれば投手重点指名は当然の戦略です。しかし支配下はわずか4名だったこと。さらに三軍要員のために即起用できるタイプの、悪く言えば育成でとれる層としては中途半端な選手を大量に獲ってしまったことが後を引いています。

  三軍のために大量に選手を抱え込んでしまう懸念もあり、支配下選手を育成選手主体である三軍で起用するという点への世間の目もあることから、わずか4名となった可能性はありますが、この時もっと大卒・社会人投手を獲得し頭数を増やしておくべきでした。

 

  ここで中継ぎを確保しておかなかったのが久保選手や西村選手、山口選手の酷使に繋がり、勝ちパターン中継ぎが短命に終わってしまった原因を作り出しています。ちなみに2010年の久保選手の登板数は79試合、山口選手は73試合です。11年にも久保選手は67試合登板し、その年のオフに慢性的な痛みに悩まされていた股関節を手術。その後フォームを崩し結果を出せず15年に戦力外となりました。

 下位で獲得した社会人・大卒投手は中継ぎ目的でも目を出せず戦力外になることが多く、この年に下位で獲得した各球団の選手たちも数多くがすでに戦力外となっています。それでもDena・大原選手やヤクルト・久古選手といった一時1軍中継ぎとして起用されていた選手もおり、勝ちパターンの負担減のためにも中継ぎを整えておくことが重要でした。

 またいくら澤村選手を獲得できたとしても、当時の先発層を考えれば澤村選手一人で足りる状況ではありません。にもかかわらず2・3位を高卒素材型に使ってしまったことを響いています。

チーム 試合 勝利 敗北 引分 勝率
中  日 144 79 62 3 .560 --
阪  神 144 78 63 3 .553 1.0
巨  人 144 79 64 1 .552 1.0
ヤクルト 144 72 68 4 .514 6.5
広  島 144 58 84 2 .408 21.5
横  浜 144 48 95 1 .336 32.0
チーム 試合 勝利 敗北 引分 勝率
ソフトバンク 144 76 63 5 .547 --
西  武 144 78 65 1 .545 0.0
ロ ッ テ 144 75 67 2 .528 2.5
日本ハム 144 74 67 3 .525 3.0
オリックス 144 69 71 4 .493 7.5
楽  天 144 62 79 3 .440 15.0

2010年度 公式戦成績 | NPB.jp 日本野球機構

 実は2010年は巨人のリーグ順位は3位。さらにこの年はセリーグから指名だったため、西武が指名した牧田選手やロッテが指名した南選手といった先発・中継ぎ候補を先に指名できたのです。このため1・2位を即戦力先発・中継ぎにし3・4位を素材型にしてバランスをとるべきでした。

 

 宮国選手は12年に17試合登板で6勝2敗防御率1.86と未来を期待させる成績を残し、エース候補として名を挙げましたが翌年に筋力アップを図りフォームを崩し、その後長期間低迷が続いています。素材型は物になれば大きな戦力アップですが、一方でバランスが難しく何かのきっかけで崩れてしまう危険性もある選手です。3位の田中選手も1軍で結果を残せず戦力外となりました。この年は投手豊作の年であり、最低でも2名は上位で即戦力投手を獲得しておかなければならず、それが巨人のその後の先発不足、FA補強の偏りにもつながっています。

 

【まとめ】

 この年のドラフトを現在から評価すると「もっと即戦力投手を獲得しておくべきだった。そして環境が整っていない中3軍創設を先走ったことが裏目に出た」といったところです。結果的に3軍は機能せず解散。2~4位の選手たちも目に見えて活躍したのは1年だけ。その後は低迷が続きこの年の支配下ドラフトは澤村・宮国選手以外戦力外・引退となっています。翌年は大卒・社会人投手偏り指名だったことを考えれば、この年はバランスよく指名すべき年でした。