近江(滋賀)が「西の横綱」大阪桐蔭を撃破した。最大4点差を追い上げ、1点差の7回に登板したリリーフエース岩佐直哉(3年)が3回無失点で逆転を呼んだ。先発した山田陽翔(はると、2年)は2回までに4失点も志願の続投でその後を無失点。降板を願い出て岩佐との鉄壁リレーを決めた。多賀章仁監督(62)が「勝てば大金星」と臨んだ一戦で「100試合分の値打ち」を得た。24日から3回戦が始まり、近江は25日に強打の盛岡大付(岩手)とぶつかる。
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エース岩佐の快投が近江に逆転勝利をもたらした。先発山田の後を受け、3-4の7回から登板。2死三塁のピンチで3番池田を「自信がある」スライダーで空振り三振に封じた。攻撃に流れをつなぎ、チームはその裏に同点、8回には2点を勝ち越した。9回、激戦を締めくくる最終球は自己最速を1キロ更新する149キロで一ゴロだった。
V候補・大阪桐蔭との大一番で、滋賀大会から続ける継投が光った。岩佐は「必勝リレーで勝てたことが一番良かった」。昨夏の新チーム発足当初、終盤に逆転される試合が頻発し、多賀監督はプロ野球のような「勝利の方程式」を導入した。3年生が終盤を担う方針を定め、背番号1の岩佐に託した。
先発した2年の山田は2回まで4失点。早めの交代もよぎった同監督に対し、「もう少し、投げさせてください」と志願。3回から調子を取り戻し、140キロ超の速球やスライダーなどをコーナーに集めた。その後二塁を踏ませたのは1度だけで、再び指揮官に直訴した。「7、8、9回は岩佐さんに託したいんです」。自信を持って先輩にバトンを託した山田は「特別な試合だった。勝ててうれしい」とかみしめた。
粘り強さに欠け、春の県大会は3回戦で逆転負け。今夏のシード権を失い、多賀監督は3年生に厳しく言った。「もうユニホームは脱いで引退してくれ」。これに3年生が奮起。ミーティングを重ね、日没までバットを振り込み、岩佐は練習試合中も走り込んだ。この日本塁打と同点打の新野は「絶対見返してやろうと思った」と振り返った。
大阪桐蔭戦を翌日に控え「負けて元々、勝てば大金星」と謙遜した多賀監督は絶賛だ。「相手は横綱。こんな勝利は後にも先にも初めて。練習試合100試合分の値打ちがある。勝ちに不思議の勝ちありという言葉をかみしめている」。3年ぶりの夏16強。たくましくなったナインに目を細めていた。
【岩佐選手の紹介】
180センチ83キロ 右投げ右打ち
変化球:スライダー・カーブ・チェンジアップ
ノーワインドアップからリズムよく投球フォームに入り、振りかぶる手前から動きが早くなりオーバーハンドから低い角度で投げ込むフォームから最速149キロ、常時140中盤のストレートを投げ込む右腕投手。140中盤の威力あるストレートを中心に、120中盤の縦のスライダー、100キロ後半のカーブ、120前半の手元で少し落ちるチェンジアップで打ちとっていきます。
チームでは主にリリーフで起用。春は肘痛により登板なしで終わったものの、2年生エースの山田陽翔選手とともに盤石の投手陣としてチームをけん引。甲子園でも2試合7回を投げ2被安打無失点と好投しています。
足を降ろす瞬間に若干の間があり、そこから一気に腕を振り込むため見た目よりもタイミングを合わせにくく、キレのあるストレートと合わさり非常に多くの空振りを奪えており、縦のスライダーとの2球種で多く打者を打ち取っています。
ストレート・スライダーのキレを高く評価される右腕投手となっています。
【指名への課題】
クイックになると制球がばらつくのが課題の一つ。間がなくなる程度でクイックでも通常時のフォームと動き自体はあまり変わらないため、リリースポイントが安定せず、ストレート・スライダーともに高めに抜けやすくなっています。
またクイックでなくなることで微妙にタイミングがずれる間がなくなり、タイミングが合わせやすくなっています。クイックになると武器となるタイミングの取りづらさとストレート・スライダーの精度が落ちるため、武器を二つ失うのは問題となります。
【指名順位予想】
先発だけでなくリリーフとしても起用が期待できますが、クイックで抜け球が増えてしまうのはリリーフとしては大きな課題となります。しかしストレートとスライダーが大半でも2試合7イニング無失点は高く評価できるポイントであるため、スライダー以外の変化球の精度アップでの伸びしろを期待して、4~5位の指名順位となります。