◆第94回センバツ高校野球大会第1日 ▽1回戦 九州国際大付3x―2クラーク記念国際=延長10回=(19日・甲子園)
開幕し、初出場のクラーク(北海道)は第3試合で九州国際大付(福岡)に2―3で延長10回サヨナラ負けを喫した。2回途中から登板した辻田旭輝(あさひ、3年)が11奪三振の熱投も、昨秋の明治神宮大会で敗れた因縁の相手にあと一歩届かなかった。佐々木啓司監督(66)の3元号勝利、通信制初勝利はお預けとなった。
辻田の目から悔し涙があふれた。2―2で迎えた延長10回1死一、三塁。九州国際大付の4番・佐倉侠史朗(2年)の打球はファウルゾーンへの浅い左飛。捕球した左翼手・藤野侑真(3年)の送球はわずかにそれ、タッチアップの走者がサヨナラのホームを踏んだ。「頼む!という気持ちでいっぱいだった。絶対に勝ちたかった」。一瞬の出来事。最速148キロ右腕はがっくりとうなだれ、膝に手をつき、動かなかった。
突然の出番にも一切動じなかった。エースナンバーを背負う山中麟翔(3年)が2回1死から2者連続四球と崩れ、20度目の聖地指揮となる佐々木監督が動いた。「いつ来ても大丈夫だった」と一塁からマウンドに向かうと、奪三振ショーが始まった。外角一辺倒の投球で5回途中4失点KOされた昨秋の神宮の反省を生かし、内角の直球と100キロ台前半のカーブ、フォークを織り交ぜて11K。「2年生なんかに絶対負けてたまるか」と今大会の“四天王”と呼ばれる佐倉から、この日最速143キロの直球で2三振を奪うなど、8回1/3を投げ抜いた。指揮官は「今までで一番最高の出来。甲子園で育てていただいたね」と評価した。
【辻田選手の紹介】
182センチ80キロ 右投げ右打ち
変化球:スライダー・カーブ・フォーク
セットから少し体を捻り、そこから勢いをつけてスリークォーターよりも高い角度から投げ下ろすフォームから最速148キロ、常時130中盤のストレートを投げ込む右腕投手。110キロ台の縦のスライダーに100キロ台のブレーキの効いたカーブを投げ込んでいきます。
武器はコントロール良く投げ込むブレーキの効いたカーブ。縦に大きく割れ、ストライクゾーンに投げ込み、フォークのようにも使え見逃し・空振り両方を奪える決め球として左右両方に機能しています。さらにカーブと似た軌道でカーブよりも早いスライダーもあり、打者は変化球に全くタイミングが合わず空振りを連発していました。
下半身が弱く上半身に頼った投球をしていたために投球が安定せず、冬に下半身を重点的に強化。体重も5キロ増えたことで投球が安定し、奪三振率12・82(33回47個)を記録。緩急を強く意識した投球ができるようになり、九州国際大付属相手に8回途中1失点と好投しています。
【指名への課題】
投げた球のほとんどはストレート・カーブののみでスライダーが1~2割程度。フォークはほとんど投げていません。スライダーもカーブと似たような軌道であるため、辻田選手の投球スタイルはストレートとカーブでストライクとフライアウトを狙うスタイルとなっています。
この投球スタイルの問題点はランナーを出してゴロを打たせたい場面でも打たせられないこと。打者34人に対しゴロアウトは6個と少なく、8回途中で126球と球数を要しています。特にスタミナが切れてくると高めに浮いてくるため、余計に球数を要しています。チェンジ系やフォークが使えていないため右打者へのインコースへの球、左打者から外に逃げ引っ掛けさせ、打者本位のバッティングをさせない変化球の開発が必要となります。
【指名順位予想】
カーブという大きな決め球はあるものの、もう一つ異なる軌道の安定して使える変化球が欲しいところ。状況に応じて使える変化球がないとある程度のレベルになれば粘られてしまうため、低めに使える変化球も必要です。
このためチェンジ・フォーク系を安定して投げられるようになることが指名候補となるラインであり、さらにストレートはコントロール重視でないため、平均球速が140前半を安定して出せるようになる成長性を見せることも必要となります。
上記課題を二つとも達成した場合、6~8位となります。使える決め球の開発が出来なかった場合は育成2~4位の可能性が高くなります。