阿部監督が先発候補のアピール合戦にうれしい悲鳴を上げた。田中瑛、又木がシート打撃でアピールし、ブルペンでは横川、西舘らが熱投。「こっちがなんかいろいろ迷っちゃうな」と競争激化に手応えを示した。
シート打撃中、指揮官は内野の後方を歩き回りながら様々な角度からチェックした。田中瑛は微妙に動く球を駆使して打者6人無安打2K。又木もテンポ良く打者8人無安打と快投した。「石川も又木も田中瑛斗もみんな良かった。ウロウロしながら(見て)いろんな迷いが生じたってことはぜいたくだなと思う」。圧巻の投球を見せたリリーフ左腕の石川を含め自ら3人の名前を挙げて絶賛した。
シート打撃前にはブルペンに足を運び、熱投する若手先発候補に熱視線を送った。横川のチェンジアップを高評価し「腕を振って必死こいて投げるのもいいけど、どうせ抜くボールだったらもっと抜いちゃえば」と助言。西舘にはフォークについて、低めから低めではなく、真ん中付近やや高めから落とす意識で投げた方が打者が反応すると捕手目線でコツを伝え、力強い投球に何度もうなずいた。
「みんないいデキしているし、ぜいたくな悩みだなと思って」。昨年15勝の菅野がメジャー移籍し「菅野の穴をどう埋めるか」と戸郷、山崎、グリフィン、井上の4本柱に次ぐ先発を課題に挙げる。実績十分の田中将に加え、チーム内競争が先発強化につながる。
練習後は野手の居残り特打に登板。今キャンプ初めて打撃投手を務めて浅野、泉口、オコエに計135球、阿部監督自身も熱投した。10日は休養日で11日は今季初実戦の紅白戦。「紅白戦も入ってくるし、そこでアピールし合ってほしい」。良い意味の悩みが深まれば深まるほどチーム力は上がっていく。(片岡 優帆)
- 【阿部監督の現状の先発ローテ構想について】
- 【①:横川 凱選手】
- 【②:赤星 優志投選手】
- 【③:又木 鉄平選手】
- 【④:田中 瑛斗選手】
- 【⑤:平内 龍太選手】
- 【⑥:堀田 賢慎選手】
- 【⑦:京本 真選手】
- 【⑧:高橋 礼選手】
- 【まとめ】
【阿部監督の現状の先発ローテ構想について】
菅野選手が海外FAで抜けた先発ローテ。現在確定しているのは開幕選手に指名された戸郷選手。次に山崎ーグリフィンー井上選手が確定。そこに23年1位の西舘選手、楽天から移籍した田中将選手の6人体制構想になっています。
それ以降の候補は横川、赤星、又木、田中瑛、平内、堀田、京本、高橋礼選手が名を連ねます。今回は23日時点のローテ候補の現状について触れていきます。
【①:横川 凱選手】
24年は12試合3洗髪を経験した左腕投手。145前後のストレートにスライダー、フォーク、シンカーに加え、今年は杉内コーチから習ったチェンジアップも武器に先発候補にあがっています。
課題は5回前後から崩れ始めるスタミナと対右の被打率だったため去年は中継ぎメインで起用されましたが、右打者に対し外に落ちる変化球で打ち気を逸らす投球を披露。打者も迷ったようなスイングが目立ち、対右に一定の成果を見せています。
四球とヒットでピンチになっても牽制の良さも混ぜ落ち着いて投げており、実戦の見通しが立てやすく、現状ではローテ筆頭候補です。
【②:赤星 優志投選手】
24年は1勝7敗と不本意な結果に終わった赤星選手。阿部監督からももっと特徴を持った投球をしてほしいと言われ、現在フォーム改造に着手。インステップに加え腕の角度を下げたスリークォーターに近いフォームになっています。
腕を下げたことでフォークが横移動になっており、対左に有効な変化球になっています。まだフォームが固まり切っていないためもう少し登板が必要ですが、現状では次点候補2番手になります。
【③:又木 鉄平選手】
23年5位の社会人左腕。WLで好投し先発候補の一人として期待されています。1年目に比べると制球もある程度まとまり変化球の抜けも減っています。しかしフォールディングの悪さ、決定的な失投で崩れ3回4失点と不本意な結果になりました。
対右のストレートは光るものがありますが、変化球で安定して空振りを奪えずコースを狙うしかないのが課題。中継ぎなら力押しでいけそうですがそこも石川選手が結果を残しているため、先発で見るには決め球に欠けています。
【④:田中 瑛斗選手】
現役ドラフトで日ハムから入団。紅白戦では右打者にシュートが投げられることで一定の評価を受けていました。また課題のクイックの遅さの改善にもつとめています。
18日のDena戦で先発したものの2回に捕まり3失点。阿部監督からも球速は上がっており今後に期待したいと評価はされているものの、出力があるタイプでないため課題の制球が甘くなると途端に崩れるようになります。特に左打者に打ち込まれており、制球が甘くなると外に構えるしかないタイプのため、おくせず踏み込まれしっかり引っ張られています。
元々即戦力枠でないため開幕後は2軍起用になりそうですが、問題点を少しずつ改善できているため、今後に期待したい選手です。
【⑤:平内 龍太選手】
現状ローテ候補の中では一番評価が低い選手。紅白戦では好投したものの、サムスン戦では2回を投げ1回は凡退でしたが、2回が大荒れ。変化球がことごとく見送られ、ストライクを取りに行ったストレートを狙い撃ちにされ2回6被安打3失点と大乱調。
1回に比べ変化球が投げた瞬間にボールとわかるほど精度が悪化しており試合ごとどころかイニングごとに調子の波が激しいことが現状の課題。右の中継ぎは泉、船迫、大勢、ケラー、マルティネスと勝ちパターン候補も揃っているため、先発・中継ぎどちらでも安定せず、ドラ1ゆえに期待値も高いことから、現状の評価はより低いものとなっています。
【⑥:堀田 賢慎選手】
24年は17試合7先発し3勝3敗。交流戦で先発し好投したものの、交流戦終了後に打ち込まれるようになり、後半は中継ぎで起用されていました。
今年は変化球の精度向上を目標にカットボール習得にも着手。サムスン戦ではストレートと同じ振り、軌道で落ちるチェンジアップで空振りを量産していました。
ストレートは140中盤ながら押し込む投球ができている一方、カーブとフォークは抜けが多くストライクが取れていなかったのが課題。まだ計算できる球種が少なく先発で計算するには2巡目以降抑えられるかが怪しい状況です。
カーブは左右のカウント球、カットは右打者の外に使える球で投球の幅が大きく広がるため、この2球種を安定して投げられないと先発は厳しいものになっています。
【⑦:京本 真選手】
24年に支配下を勝ち取った右腕投手。しかし支配下をピークに調子を落とし2軍でも不安定な状況が続いていました。オーストラリアWLでは先発で好投していたため今年は先発候補として1軍帯同しており、2試合を投げ無失点と好投しています。
ただ横川選手と違い長くて2イニングまでと先発よりも中継ぎに近い起用をされており、角度のあるストレートとパワーカーブは魅力ですが、フォークは抜け気味。
ストレートも意図せずシュート回転することがあるため、もう少しまとまらないと1軍では中継ぎ止まり。まだあせる年齢でないため、2軍で先発としてまわしながら、1軍先発初勝利を狙いたいラインです。
【⑧:高橋 礼選手】
ソフトバンクからトレード移籍。11試合を投げ2勝2敗と春は先発ローテで活躍したものの、対左が安定せず打ち込まれるようになり、中継ぎでも安定せず夏以降は2軍メインになりました。
今年はフォーム改造に加えシンカーとカットボール習得にも着手。まだ実戦登板はしておらず、キャンプも2軍スタートのため現状先発ローテ候補にはなっていません。フォーム、変化球習得中のため、夏までに1軍登板できれば順調となります。
【まとめ】
現状の評価は
横川>赤星>又木>田中瑛>堀田>京本>平内>高橋礼
ただ赤星選手と又木選手の間には大きな開きがあり、赤星選手が駄目になると途端に先発候補は苦しいものになります。
