ドラフト指名を考える上で非常に重要になるのがチーム事情。どのポジションを補強すべきか、またシーズンオフごろからチーム状態にどのような変化が生じたかを考慮したうえで指名予想を考える必要があります。
【ポジティブポイント】
【①:左腕中継ぎの台頭】
引用:読売巨人軍公式サイト
巨人にとって大きな課題だった左腕中継ぎ。山口選手引退後吉川選手が中継ぎ転向しましたが、オープン戦終盤から調子を崩し、現在は2軍調整となっています。大江選手もオープン戦は好調だったものの開幕戦以降は結果を出せず2軍落ちとなりました。
これで今年も左腕中継ぎに苦労するかと思いきや、今年大きく投球フォームをチェンジした中川選手が台頭。クック選手離脱によりリリーフとして起用され、防御率0点台を記録しています。さらに戦力外候補とすらなっていた戸根選手が145超えのストレートをガンガン投げ込むパワー左腕として復活。
去年から先発として戦力にならず今年も2軍メインとなっていた田口選手も中継ぎ昇格。スライダーピッチャーが気づけばストレートパワーピッチャーに変貌していました。ここに高木京選手も加わり、2軍では森福・池田選手も好投し昇格を待っている状態。下記が現在の巨人左腕中継ぎ状態となっています。
N0. | 選手名 | 試合数 | イニング | 勝利 | 敗北 | H | S | 防御率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 田口 麗斗 | 6 | 10(1/3) | 0 | 0 | 0 | 0 | 4.35 |
2 | 中川 皓太 | 17 | 18 | 1 | 0 | 7 | 1 | 0.5 |
3 | 吉川 光夫 | 8 | 6(1/3) | 0 | 1 | 3 | 0 | 9.95 |
4 | 池田 駿 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
5 | 戸根 千明 | 17 | 11(2/3) | 0 | 0 | 7 | 0 | 1.54 |
6 | 高木 京介 | 12 | 12(2/3) | 1 | 0 | 1 | 1 | 2.13 |
7 | 大江 竜聖 | 4 | 4(1/3) | 0 | 0 | 0 | 0 | 4.15 |
8 | 森福 允彦 | 2 | 1(2/3) | 0 | 0 | 0 | 0 | 10.8 |
このため今期のドラフトでは即戦力左腕を指名する必要がなくなり、ほかのポジション獲得に回すことができます。
【②:高橋優貴選手の先発ローテ定着】
ドラフト当時は制球に課題はあるものの速球が武器だった左腕投手。しかし4年に制球重視にフォームチェンジしており、クイックに課題があったりとどこまで戦力になるかが未知数となっていました。
オープン戦からも大崩れしないながらも圧巻ともいえない内容が続き、果たして開幕時は1軍なのか2軍なのかなかなか判断がつかない状態となっていました。しかし田口・今村選手と若手左腕先発候補がピリっとしない中で高橋選手が台頭。課題を少しずつ確実に修正しながら実績を上げていきました。
まだ球数が多く6回前後で降板してしまうのが課題ですが、7試合3勝2敗防御率2.45と裏ローテとしては十分な成績を残しています。
【⓷:3軍の試合数の削減】
引用:読売巨人軍公式サイト
実はあまり話題になっていませんが、3軍の試合が大きく削減されています。もともと江藤3軍監督時代に育成選手は体づくりから時間がかかる選手ばかりなのだから、そちらに重きを置くべしという方針のもと、鹿取GMとともに試合数削減が検討されていました。
その成果は試合数の推移に表れており、17年は109試合だったものの、18年は
85試合、19試合は58試合にまで削減されています。2年間で試合数は半分にまで減らされており、はっきりと数字で表れています。もちろんこの後追加で新たな遠征試合が決まるかもしれませんが、前年度より増えることはないと思われます。
この試合数の削減により、試合成立のための必要人数が減ったことで3軍に多くの選手を帯同させる必要がなくなったことや、試合数自体が減ったことで試合がない日は3軍の選手を2軍に帯同させることができるようになりました。このため3軍の必要選手数に縛られることがなくなり、選手の入れ替えや出場機会の確保。入れ替えの頻度を上げることにより危機感を煽ることもできるようになりました。
そのため3軍要員としての投手獲得はあまり考慮する必要がなく、中継ぎ要員としての選手を除き、育成選手については今後も高卒メインとなる可能性が高くなっています。
【加藤・山下航汰選手の活躍】
巨人にとって課題だった左の中長距離野手。そんななか結果を出してきたのが育成3年目の加藤選手と1年目の山下選手。特に山下選手は1年目ながら10%前後の低い三振率に三割越の打率。それもゴロヒットや内野安打でなく速い当たりのライナーのため、長打も期待できます。守備やスタミナ面からも即支配下の可能性は低いものの、左野手事情に希望が見えてきたのは朗報です
【ネガティブポイント】
【①:先発ローテの崩壊】
引用:読売巨人軍公式サイト
去年の巨人投手陣については「先発ローテは安定しているが中継ぎが勝ちローテですら信用できないので、勝ちたければ完投するしかない」と評価されていました。
しかし今年は中継ぎに加え先発さえも崩壊しており、菅野選手は防御率5点台で腰痛で抹消。山口選手も序盤は安定していたものの最近は
さらに今村選手もピリッとせず、ヤングマン選手も平均5イニングで防御率4点台。2軍から昇格できるような投手もまだ育っておらず、ドラフト1位の高橋選手がローテとして投げられていなかったら完全に崩壊していました。このため佐々木・奥川選手などのBIG4を取る余裕はなく、とにかく即戦力先発の補強は絶対であり、2軍で投げさせ育てていく先発候補の獲得も求められます。
【②:吉川尚選手の度重なる離脱】
引用:読売巨人軍公式サイト
広い守備範囲とミート力でついに巨人のセカンド問題を解決させたかに思えた吉川尚選手。問題はスペ体質であり、毎年何かしらの故障で離脱しています。今年もキャンプで腰痛を発症し一時離脱。復帰したのもつかのは4月に再び腰痛により離脱。5月6日にランニング調整を開始したことが報じられましたが、復帰時期はまだ未定。このように毎年離脱するうえ非常に打撃の調子が波があるタイプでは戦力として計算しにくく、今年も即戦力内野手を獲得しないといけないほどの状況ではありませんが、内野手にはまだ目途がつきそうにありません。
【⓷:右腕中継ぎ不足の深刻化】
引用:読売巨人軍公式サイト
左腕の一方で不足が叫ばれているのが右腕中継ぎ。マシソン選手は手術に加え病気でかなり出遅れ、リリーフのクック選手は肘の違和感でリハビリ中。期待された鍬原選手も二軍調整が続き、中継ぎ崩壊でついに一軍昇格を果たしましたが、それでも駒不足です。
谷岡選手はまだノースロー状態から続報もなく復帰時期は未定。若手の宮国選手はメンタルが改善されず敗戦処理が手一杯。支配下された坂本工選手も支配下以降はパッとしません。
このため田原・アダメス・野上・桜井選手で何とかやりくりしている状態。先発転向させ澤村選手も結局中継ぎ再転向のなりました。
候補自体がいないのが今の巨人の現状。即戦力・見込み選手を2名は必要な状態となっています。
【④:上原選手の引退】
実はドラフト上大きな問題となった上原選手の引退。上原選手は今年引退の可能性が高かった選手ですが、まさかの5月に現役引退。このため現在の支配下枠は64名となり、7月31日までに1名支配下を増やさないと育成ドラフトに参加できません。本来ならドラフトで人数調整ができたのですが、今回の事例ではそれ以外の方法で増やす必要があり、その分ドラフトでの指名を減らす必要があります。
また支配下候補として挙げられる山川・加藤選手ともに二軍での本格起用は今年が初めてであり、本来ならオフシーズンまで様子見したかった選手たちです。その意味ではかなりリスクのある支配下契約となります。もちろん金銭トレードで1名獲得する手もありますが、2名とも育成3年目で一度自由契約としなければならず、他球団が支配下できるリスクを考えれば育成昇格が現実的です。
【⑤:ライト候補不足】
かねてから問題だった1軍でライト起用できる選手が全然いないという問題。高齢となった亀井選手が出ずっぱりという状態となっており、陽選手も打撃の波が激しすぎてウィークポイントとなっています。重信選手もライトとしては弱肩のためライトスタメン起用は見込めていません。
育成の加藤選手がライトができて中長距離の外野手として期待されますが、加藤選手しか候補がいないのも大きな問題となっています。幸い今年はライト起用されている大卒選手は中長距離タイプが多いため、その中の1名は獲得したいところです。
【まとめ】
投手事情がシーズン当初よりも厳しいものとなっており、即戦力・素材型の先発・右腕中継ぎの獲得やライト起用ができる大卒選手の獲得が急務となっています。去年が高卒大量指名の年だったため、今年は大卒・社会人メインに高卒は育成含めて1~3名程度におさまるかもしれません。