巨人が育成のサムエル・アダメス投手(23)と支配下選手契約を結んだことを16日、発表した。
背番号92で、契約金5万ドル(約550万円)年俸5万6000ドル(約620万円)。ドミニカ共和国出身で16年に入団した助っ人右腕は千葉市内で行われた会見の冒頭で「オハヨウゴザイマス」と日本語であいさつ。「自分のことを信じて、契約してくれたジャイアンツに感謝の気持ちでいっぱいです。背番号が2ケタになり、1軍の勝利に貢献したいです」と笑顔を見せた。会見後にロッテ戦(ZOZOマリン)から1軍に合流した。
193センチ右腕で粗削りながら素材型として獲得し、年々、実力をつけてきた。今季は150キロ台の直球を武器に、イースタン・リーグでは抑えを務めている。1勝1敗11セーブ、防御率2・18で、20回2/3で20三振を奪うなど奪三振能力も高い。「直球とシンカーの2つで相手を打ち取っていきたい」と武器をアピールした。
“ジャパン・ドリーム”の体現に1歩、近づいた。「ペドロ・マルティネスを目標としてきた。小さい時にメジャーをテレビで父と見てきて、1番理想の投手だった。彼により一層、近づけるように」とレッドソックスなどでメジャー通算219勝を挙げた故郷の右腕をヒーローに掲げる。
来日3年目。当初は「食事に苦労した」と言うが「今は焼き肉、ラーメン、うどんが好き」とすっかり順応。日本の好きな場所を聞かれ「ロッポンギ(六本木)」と答え、報道陣を爆笑させた。(金額は推定)
【アダメス選手について】
【アダメス選手のこれまでの経緯】
アダメス選手はソリマン選手とともに16年4月に巨人と育成契約。ソリマン選手は本格派として即戦力期待での獲得。アダメス選手は当時21歳で193センチと長身とストレートが武器ながら荒削りで素材型としての獲得でした。
新入団の育成選手、マヌエル・ソリマン(26)とサムエル・アダメス(21)の両投手(いずれもドミニカ共和国出身)が30日午前、ともに来日しました。背番号は、ソリマン投手が「022」、アダメス投手が「025」です。
2人はこの日ジャイアンツ寮に入寮後、早速、ジャイアンツ球場で練習。計19時間のフライトで少し疲れた表情を見せながらも、キャッチボールで威力のある速球を見せました。
2人とも日本は初めてですが、「ラテンの選手にとって、日本野球は米国に次いで大きく、魅力のある市場」と言い、「ジャイアンツは米国のヤンキースのようなチーム。MAX98マイル(約158キロ)の直球が私の長所。支配下を目指したい」(ソリマン投手)、「素晴らしいチームの一員になり光栄。MAX95マイル(約153キロ)の直球とチェンジアップが持ち味。優勝に貢献したい」(アダメス投手)と抱負を述べました。
16年は主に3軍登板のみとなり2軍登板は0。しかし2年目には2軍で26試合4勝4敗68.1/3イニング 27四死球防御率3.16と中継ぎとして結果を残し、18年には2軍のセットアッパーを勤めるほどの活躍をしています。
【アダメス選手の武器】
アダメス選手の大きな武器は最速157キロのストレート。変化球としてはカーブ・スライダー・チェンジアップ・フォーク・シンカーを扱うことができます。
当初は最速153キロだったものの、とにかくコントロールが荒く変化球の精度もいまいちでした。しかし地道なトレーニングで下半身回りを鍛え制球が向上。ストレートも4キロ伸び最速157キロとなっています。
下半身回りを鍛えられた理由の一つが食文化への順応です。これは育成外国人に限らず、助っ人としてきた外国人選手にとって大きな課題となる部分であり、特に日本文化があまり浸透していない国から来た選手はその食文化の違いに戸惑い、食事を受け付けず体調を崩したりする例があります。元Denaのグリエル選手はその偏食ぶりが話題となりました。
DeNA・グリエルが日本で最も心配しているのが食事。日本の米や生ものが苦手で、昨春のWBCで来日した際は5キロも体重が落ちたという。球団の管理栄養士・乙坂紀子さんはインターネットだけでなく、実際に都内のキューバ料理店にも足を運び、メニューを研究。コングリというインゲン豆を混ぜた炊き込みご飯をグリエルに試食してもらいレシピを完成。球場の食堂でいつでも出せるように準備している。
特に育成選手は肉体面の強化も必要であり、線の細かったアダメス選手は食事で体重を増やし筋肉をつけることが求められましたが、やはり当初は食事に苦労したようです。
来日3年目。当初は「食事に苦労した」と言うが「今は焼き肉、ラーメン、うどんが好き」とすっかり順応。日本の好きな場所を聞かれ「ロッポンギ(六本木)」と答え、報道陣を爆笑させた。
しかし3年目を向かえ食生活も順応。常に1軍の試合をチェックするなど勤勉さも評価されており、成績面以外での野球への貪欲さも支配下になれるほどの素材になれた理由の一つとなります。
【なぜ他の育成外国人選手でなくアダメス選手が支配下となったのか】
現在の巨人の育成外国人は支配下されたアダメス選手を除き、左腕のメルセデス選手と内野手のマルティネス選手がいますが、なぜこの二人でなくアダメス選手だったのか。
【メルセデス選手について】
まずメルセデス選手についてですが、入団した17年は2軍で18試合2勝3敗防御率3.29と、先発として結果を残し、140キロをコンスタントに出せる先発左腕として期待されていました。
しかし18年は怪我でスタートが出遅れ3軍スタート。現在は2軍での登板も3試合に留まっており、実績不足、そして先発ローテは畠選手の長期離脱・田口選手の不調などアクシデントはあったものの、今村・鍬原・内海選手などがローテを守れており、支配下枠でヤングマン選手もいるため、支配下の優先順位は下がっています。
【マルティネス選手について】
引用:読売巨人軍公式サイト
次にマルティネス選手。メルセデスと同期入団ながらこちらは入団テストを6回も受けついに育成を勝ち取った苦労人。年齢今年で188センチ77キロの24歳であり、日本に来る前はショート・外野を守っていたスイッチヒッター。巨人では内野メインで起用されています。
当初は3軍の数合わせ要員ではないかと言われていましたが、その身体能力の高さで今期は2軍で48試合159打数39安打7HR打率.267で長打力もアピールしています。特に左打席でのホームランが多く、現在左の長距離打者が不足する巨人において必要な戦力と思われます。
それではなぜ支配下にされなかったについては、まず守備に課題を持っていること。内野手として起用されているものの、その守備内容は良くも悪くも荒いものとなっています。身体能力の高さが伺える動きや送球速度はありますが、一方で危なっかしいスローイングや捕球も見られ、1軍として起用するには大きな壁となっています。
また17年ドラフト5位の田中俊太選手がサードスタメンで起用できており、セカンドはその守備範囲の広さから吉川尚選手が起用されています。2軍でも4位入団の北村選手が4本塁打を記録し打率.287と期待できる結果を残しています。一方左でも辻選手が29試合ながら115打数31安打打率.310、オープン戦でも粘りのある打撃を披露していました。このため内野手についても緊急的に支配下登録する必要がなく、内野手としても課題があるため支配下には至りませんでした。
ただしマルティネス選手は外野手としても起用された過去があり、俊足でもあることからセンター起用が見込める選手。現在の巨人は外野手問題は解決していないため、左打席に専任し外野手メインとなれば支配下の見込みも出てきます。
【アダメス選手が登録された背景】
【①パワー中継ぎの不足】
アダメス選手が登録されたのは本人だけでなく環境の変化もありました。アダメス選手は中継ぎとして期待されていますが、現在の1軍中継ぎは左だと池田・森福選手、右なら谷岡・田原・宮国選手を中心に沢村・マシソン・カミネロ選手も勝ちパターンに繋げる形となっています。
防御率こそいいものの中継ぎの厚みとしては磐石ではなく、沢村選手はルーズショルダー持ち、マシソン選手も年齢・勤続疲労によるストレートの劣化が見えており、パワータイプ中継ぎが不足しています。中継ぎの総数自体も多くなく、現在の育成中継ぎで支配下登録できる結果を残しているのがアダメス選手のみのため、パワータイプ中継ぎの補充をかねての支配下となっています。
【②マギー・ゲレーロ両野手の不調】
引用:読売巨人軍公式サイト
また外国人登録数の問題ですが、ゲレーロ選手がコンディション不良に加え打撃不振、マギー選手も前年度のような結果を残せておらず、1軍で外国人枠で当確となっているのがマシソン・カミネロ選手の2名のみとなっているため、枠の問題も大きな壁となっていません。
【③篠原選手の不祥事】
巨人は13日、河野元貴捕手(26)と篠原慎平投手(28)に「私生活においても社会的に非難されるような不品行な行為は一切してはならない」と定めた球団規則を違反する行為があったとして、当面謹慎、事実関係を確認後、正式処分を下すとした。
球団によると2選手は今月10日深夜から翌11日未明にかけて、都内の飲食店の個室で知人ら男女10人で飲食をしていた。その席で篠原が服を脱いで裸になり、同席した河野がその様子をスマートフォンで撮影し、SNSのインスタグラムに自身のフォロワー限定で公開したという。
球団は「当球団の選手が酒席で悪ふざけをし、また、知人限定で短時間とはいえSNSで不適切な動画を公開した行為は球団規則に反する行為であり、誠に遺憾です。選手の指導、教育を徹底し、再発防止をはかってまいります」とコメント。河野、篠原の2選手は球団を通し「軽率なことをしてしまった」とコメント。深く反省しているという。
なお、河野は12日のソフトバンク1回戦(ヤクオクドーム)の1軍メンバーとして同行していたが、ベンチ入りメンバーには入らず、試合前練習後に球場を後にしていた。
今月、篠原・河野選手が裸の動画をインスタに投稿し謹慎処分を受けています。篠原選手はパワータイプとして17年に支配下登録された選手ですが、制球に課題を持ち負け試合での起用にとどまっていました。
しかし篠原選手が今回の騒動で期限未定の自宅謹慎となり、少なくとも今期は1軍で見る可能性は低くなりました。その結果1軍で起用できるパワータイプの枠が空いてしまい、結果として似たタイプのアダメス選手に支配下の話が舞い込んでいます。
【勝ちパターンに上がるための課題】
【四死球率の高さ】
いくら支配下を勝ち取ったとはいえ、アダメス選手はまだ課題もある途上の選手。最初は負け試合でイニングを消化しながら実績を積んでいき信用を得ていく形となりますが、大きな課題はやはりコントロール。2軍では19試合20(2/3)イニングで四死球数は13個。2イニングに1個は四死球を出していることになり、セットアッパーとして起用されるには大きな課題となります。
【変化球の精度】
制球についてはアダメス選手に限らず、マシソン・カミネロ選手も課題でしたが、マシソン選手ならスライダー、カミネロ選手ならツーシームという強力な武器となる変化球を持っていました。
アダメス選手はシンカーを武器と豪語していますが、問題は変化球の精度。上手く変化を制御できておらず、それが四死球率の高さに繋がっています。
【1軍帯同で期待される効果】
支配下にされたことで大きな環境の変化が起こります。それは1軍帯同が可能になったこと。育成選手はシーズンオフ・オープン戦を除き1軍に帯同することはありません。しかし支配下にされたことで1軍に帯同できるようになり、これまで教えをこうことが難しかった選手・コーチの指導を受けることができます。
特に1軍には同じように獲得時は制球難で紅白戦で頭部死球をしたようなコントロールから、歴代最高クラスの助っ人投手と評価されるほどとなったマシソン選手。としてそんなマシソン選手を魔改造した豊田コーチがいます。アダメス選手にとって生きた教材ともいえるマシソン選手と、そんなマシソン選手を作り上げた豊田コーチたちによって制球難をどれだけ改善できるか、それがアダメス選手が勝ちパターンになるための必要条件となります。