読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

田口麗斗投手と広岡大志内野手のトレードが成立。両球団の選手層からみたとトレードに選ばれた理由

 

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巨人・田口麗斗投手(25)と、ヤクルト・広岡大志内野手(23)の交換トレードが1日、両球団間で合意に達した。この日午後に正式発表された。

 春季キャンプを終えたばかりの原巨人が、水面下でさらなる戦力整備を進めていた。パンチ力のある右打ちの内野手を探していた巨人と、先発投手陣の層を厚くしたいヤクルトとの思惑が一致。シーズン開幕まで4週間を切ったタイミングで、電撃トレードが成立した。

 広岡は将来性豊かな右の大砲だ。15年ドラフト2位でヤクルト入り。ルーキーイヤーの16年9月29日のDeNA戦で1軍初スタメンを飾ると、2回にセ・リーグの高卒新人野手では56年ぶりとなる初打席初本塁打をマーク。勝負強さを見せつけた。19年には自身初の2ケタとなる10本塁打を記録。守備でも本職の遊撃手に加え、二塁や外野など複数のポジションをこなせる万能性も持つ。攻守に荒削りながら潜在能力の高さを評価する声は多く、成長次第で球団が長く探している坂本勇人の後継者候補になり得るとみている。奈良・智弁学園出身で、若大将・岡本和真の後輩にあたる。

 ヤクルトに移る田口は実績十分の左腕だ。2013年ドラフト3位で広島新庄高から入団。球速は140キロ台ながら、投球術に長け、16年に10勝、17年には自己最多となる13勝と2年連続2ケタ勝利を挙げた。18年以降は故障などが重なり、先発ローテ―ションに定着できなかったが、19年は中継ぎとしてフル回転。20年も開幕ローテ入りを果たしたが、故障もあって、終盤は中継ぎに回っていた。ローテ―ション入りに燃える今春、キャンプ序盤に右太もも裏の張りを訴えて離脱したが、すでに完治。2軍で虎視眈々と1軍昇格を狙っていた。

 巨人は昨年、5件のトレードを成立させた。その背景には「選手を飼い殺しにしない」という現場、フロントの共通認識がある。球団としては田口の実力やタフネスさへの評価、期待ともに高いが、先発、中継ぎとも層が厚みを増してきており、思い切ったトレードに踏み切ったと見られる。両者とも、現状では殻を破り切れていない印象が強く、互いに新天地で素質が一気に開花する可能性は十分にあると言える。

巨人・田口麗斗とヤクルト・広岡大志との交換トレードが電撃成立 両球団から発表 : スポーツ報知

 

 

 

 【田口選手と広岡選手のトレードが成立】

 巨人の田口選手とヤクルトの広岡選手のトレードが1日に成立。投手の頭数が欲しいヤクルトと、右打ちの長打力がある若手野手が欲しい巨人とで思惑が一致。どちらも伸び悩みを見せていた状態であったため、新環境での開花を期待してのトレードともなりました。

 しかし両球団ともに伸び悩みを見せていた選手は他にもいるなか、なぜこの二人がトレードの弾に選ばれたのか、それぞれの選手層事情からみていきたいと思います。

 

【巨人側の事情】

【①:岡本選手以降台頭しない右打ちのスラッガー

2020年の巨人1軍の出場数を各ポジションごとに見ると、

キャッチャー:大城(左):85 炭谷(右):53 岸田(右):29

ファースト:中島(右):88 ウィーラー(右):44 北村(右):27

 セカンド:吉川(左):104 若林(両):20 北村(右):19

 ショート:坂本(右):113 増田大(右):36 吉川(左):16

  サード:岡本(右):118 若林(両):9 北村(右):8

   外野:丸(左):113 松原(左):84 ウィーラー(右):51

 

1番:吉川尚(左):セカンド

2番:松原(左):ライト

3番:坂本(右):ショート

4番:岡本(右):サード

5番:丸(左):センター

6番:中島(右):ファースト

7番:大城(左):キャッチャー

8番:ウィーラー(右):レフト

 

 このように、左は吉川尚・大城・松原選手等長打面はともかくスタメンレギュラーを獲得しましたが、右については20代は岡本選手のみ。北村・岸田選手は徐々に起用の機会は増えているものの、どちらかといえば中距離打者で本塁打王を期待できるタイプではありません。

 また20年の巨人2軍の本塁打数順についても、1位は外国人のウレーニャ選手で12本、2位は8本で八百板選手。3位は6本の香月選手、4位は陽選手と若林選手の5位で、右打ちの20代はウレーニャ選手のみ。スラッガー候補として右打ちの菊田選手を3位で獲得しましたが、去年は1本のみでまだまだ時間がかかることから、さらなる右打ちの若手スラッガー候補の獲得は急務となっていました。

 

【②:徐々に若手が出てきた先発・左中継ぎ】

 当初田口選手に期待されていたのは先発ローテ。しかし菅野選手が残留し井納選手をFAで獲得。伸び悩んでいた今村選手も去年後半に先発起用されると、12戦5勝2敗防御率3.16で先発ローテに入り、畠選手も12戦4勝4敗防御率2.88と、調子の波はあるもののローテ候補として十分な成績を残しました。このため21年は菅野ーサンチェスー戸郷ー井納ー今村ー畠となり、ここにメルセデス・高橋・直江・横川・平内選手が控えます。桜井選手はリリーフ起用の方針が示されているためローテ候補から外れていますが、ここに26試合で5勝7敗防御率4.63の田口選手が入るにはかなりの離脱者が出なければなりません。

 ならばロングリリーフを期待した中継ぎではどうかといわれれば、高木選手が股関節の故障で現在も本来の投球が出来ていないという不安はあるものの、大江選手が勝ちパターン候補にまで台頭。ロングリリーフもできる便利屋枠でもあり、そこに高梨選手と順調に調子を戻す戸根選手、そして守護神候補の中川選手と安定した4人が揃い、さらに左腕候補として6位で山本選手も獲得しました。もし離脱者が出た場合でも高橋選手を中継ぎにまわせることを去年立証してしまったため、こちらでも田口選手の使い道が限られています。

 現状では先発ローテとしてもかなり後ろにおり、中継ぎとしても敗戦処理止まり。しかし先発実績は市場では高く評価されるため、よくいえば飼い殺しを防ぐためであり、選手として市場価値が高いうちに他球団の有望株とトレードした形となります。

 

 

【ヤクルト側の事情】

【①:戦力になっていない即戦力ドラフト】


15年:1位東洋大原樹理選手  86試合16勝35敗防御率4.23
16年:2位明治大・星知弥選手  88試合7勝11敗防御率4.98
    4位名古屋経済大・中尾輝選手 73試合7勝5敗防御率4.89

    6位相双リテック・菊沢竜佑選手 引退


17年:2位三菱重工・大下佑馬選手 69試合2勝4敗防御率4.34
    3位岡山商科・蔵本治孝選手 8試合0勝0敗防御率9.24


18年:1位國學院大・清水昇選手  63試合0勝7敗防御率4.76
    5位新日鐵住金・坂本光士郎選手 20試合0勝1敗防御率6.57
    7位九州共立大・久保拓真選手 26試合0勝1敗防御率5.84


19年:2位日体大・吉田大喜選手 14試合2勝7敗防御率5.21
    3位創価大・杉山晃基選手 登板無し  
    4位大阪商業大学大西広樹選手 5試合0勝1敗防御率5.00
20年:1位慶応大・木沢尚文選手
    2位東北福祉大・山野太一選手

と、過去5年のドラフトで大卒・社会人投手を14名も獲得しています。ヤクルトは慢性的な投手不足が続いており、先発・中継ぎともに即戦力を獲得してきましたが、まさかの通算防御率3点台以下が0。清水選手は去年中継ぎで結果を残しているため、中継ぎとしては戦力になっているものの、他の選手は裏ローテ、勝ちパターン候補ですらありません。

 このため先発ローテは石川ー小川ースアレスー高橋ー高梨ーサイ・スニードーバンデンハークで次点で歳内、原、木澤、吉田となっています。しかしローテの高橋・高梨選手ともに練習試合で炎上、木澤選手もピリッとせず早くもローテ崩壊の危機となっており、先発実績のある投手の獲得は急務となっていました。

 

【②:飽和気味のショート・サード】

 広岡選手のメインポジションはサード・ショート。しかしショートは西浦・エスコバー選手がいたためセカンド・サードが主な起用ポジションでしたが、20年のサード守備率は.935,セカンドも.963とあまりいい数字を残せていません。外野起用もされていたものの、一軍打率も.215で外野は青木・雄平・坂口選手をレギュラーに山崎・中山・濱口選手と若手も台頭。

 2軍でも高卒の長岡・武岡選手を筆頭に支配下を勝ち取ったユーティリティ内野手の松本友選手、社会人出身の吉田大成選手。そして3位で獲得した東北福祉大・元山選手と頭数も揃っているため、投手に比べるとまだ選手層には余裕があります。右の強打者だった山田選手が残留表明したことで右の長打者を急いで台頭させる必要がなくなったことも影響しました。

 ヤクルトの選手層は決して厚いとは言い切れませんが、常に崩壊気味の投手層を優先させた形となります。

 

 

【まとめ】

 巨人は成績が伸び悩んでいる実績のある選手を早めに出すことで、他球団の長打力のある有望株を獲得し野手の底上げを図った。ヤクルトはとにかく先発の頭数を獲得したかったことが目的となります。