読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

支配下復帰を目指す17年ドラ1鍬原拓也選手。投手として成長した姿と残る課題とは

 

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イースタン・リーグ 巨人4―2DeNA(31日・G球場)

 巨人2軍はDeNAと対戦し、4―2で勝利した。

 先発した鍬原は6回2失点と力投。3回と6回にタイムリーを浴びたが、粘り強い投球で最少失点に抑えた。

 打線は初回に敵失で1点を先取。同点で迎えた3回は1死二塁から広岡のタイムリーで勝ち越した。その後同点とされて迎えた6回、2死二塁から増田大のタイムリーで再び勝ち越しに成功すると、続く広岡の適時二塁打も飛び出し、リードを広げた。

 2番手・堀岡は2回無失点、9回は畠が3者凡退で抑え、試合を締めた。

【巨人】鍬原拓也が6回2失点 広岡大志が猛打賞の活躍で2連勝 2軍DeNA戦 : スポーツ報知

 

 

 

【育成再契約後の歩み】

 巨人入団後制球難に悩み、3年目に中学時代に投げていたサイドスローに転向。5試合1勝0敗、防御率6・43と転向後もいまいちの成績でしたが、8月12日に肘の違和感を覚え診断後に右ひじの肘頭骨折が発覚。20年オフには19年ドラ1の堀田選手とともに育成再契約となりました。

 その後5月3日の千曲川硬式野球クラブ戦で264日ぶりに実践復帰。2回無失点に抑えると、7日の西武戦で2軍復帰。1(2/3)回を5安打3失点と不本意な結果となりましたが、7月24日の西武戦で2番手で登板すると4回3安打無失点3奪三振と好投し、1年ぶりの勝利投手となりました。

 その後7月31日の横浜戦では先発として起用され、6回2失点で白星をあげ、現在2軍成績は13試合22回(2/3)回2勝0敗防御率3・97となっています。

 

【プロ入り後4年でどのように成長したのか】

【①:抜けることが減ったストレート】

 鍬原選手の大きな特徴は決め球のシンカーと最速152キロの力あるストレートでした。しかしストレートは抜け球が目立ち、サイドスローに転向した20年でも1軍では7イニングに対し6四死球といった内容でした。

 しかし今年はこの四死球率が改善。通算では22回(2/3)イニングで10四死球と一見すると悪い数字に見えますが、24日の西武戦では4回無四死球。31日の横浜戦では6回で1四死球四死球率が改善しています。

 その理由の一つがストレートが以前に比べ安定していること。平均球速は145前後ですが、以前より高めに抜けたボール球が減り、低め・コースに投げることが出来るようになっています。このためシンカー・チェンジアップが効果的に使えるようになっており、空振り率が上がったことで以前より四死球率の改善につながっています。

 

 

【②:試行錯誤の先にいきついた腕の角度】


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 鍬原選手の腕の角度はオーバースローよりも少し腕の角度が低い投げ下ろすフォームから、20年に制球を求め腕を下げるもフォームと連動せず球速を求めた結果指にひっかかる球が増え、そこからサイドスローに切り替えました。

 骨折から復帰した21年は1年目のような振り下ろすフォームに戻しましたが、1年目よりもスリークォーター気味の角度。しかし腕の角度を下げても140中盤を出せるようになったことで制球が向上しています。

 

【⓷:空振りを奪える2種の変化球】

 鍬原選手が数多くの空振りを奪っていたのが左打者の外に逃げるシンカーと、打者の手元で小さく変化するチェンジアップ。左・右両方に対し使える変化球があることに加え、ストレートの制球が高まったことでこの2種の変化球が効果的に使えるようになっています。

 

【残る課題】

【スライダーとカットの精度に課題】

 シンカー・チェンジに比べ抜け球が目立ったのがスライダー・カットボールの2種。右打者のアウトコースに投げようとするも高めに抜けてしまい、あまり変化もしないためタイミングを外されても外野の頭を超える当たりを打たれていました。

 鍬原選手はオーソドックスなフォームになっているため、先発として計算するなら4種は使える変化球が必要です。チェンジ・シンカーともにあまり緩急がないため二巡目になるとストレートにタイミングが合うようになっています。

 大田選手に対しアウトコースに投げたスライダーは完全にタイミングを外し空振りを奪えていたため、対右を安定させるためにもスライダー・カットの精度アップは必須となります。

 

 

【スプリットを持ち球の一つに出来るか】


 鍬原選手の変化球は全体的に変化量の少ないものが多く、ある程度制球がまとまっている今はストライク先行で投げぬいています。
しかし二巡目になると打者もタイミングや変化球の軌道に慣れてくるため、無理に打ち返さず変化量の少ない球をミート打ちし三遊間を抜けるヒットを連打されていました。
 鍬原選手は持ち球としてスライダー・シュート・チェンジ・カット・シンカー・スプリットがありますが、現在スプリットはほとんど投げていません。指に引っかかったようなホームベースに当たる低さに真っすぐ落ちていく球は何球か投げていましたが、打者はハーフスイングになることもなくボール球となっています。
 ストライクからボールになるような高精度のスプリットでなくとも、大きく落ちる球があると打者に認識させられるだけで、ストレート・チェンジアップへのスイングは大きく変わります。
 落ちる球が来た場合スイングを止めなければならないため、打者は決め打ちをするか、バットを短く持つ等止めやすいスイングをする必要があり、スプリットを頭に入れた状態でシンカー・チェンジが来ればスイングに迷いが生じ、中途半端なスイングやスプリットと思いバットを止めて見逃し三振といった攻め方もできます。

 

支配下復帰の可能性】

 菅野選手がまだ調整段階で今村選手もシーズン中盤以降、戸郷選手も去年ほど安定しておらず、先発として結果を残せていません。サンチェスー戸郷ーメルセデスー高橋ー直江選手とヘルニアから支配下復帰した直江選手を加えてもぎりぎりのローテであるため、現在中継ぎ登板の畠選手を先発に戻した場合、右の中継ぎは田中豊・鍵谷・戸田・デラロサ・ビエイラ選手の5名のみ。
ビエイラ選手は9回の守護神であるため、6~8回を計算できる右の中継ぎは残りの4名のみとなります。
 古川選手を以前の田中豊選手のポジションに加えても5名。大竹・野上選手がキャッチボール段階まで回復していますが、シーズン中に戻れるかは怪しいラインとなります。
 そのため中継ぎの頭数確保のため鍬原選手を支配下登録する可能性は十分にあります。巨人の支配下登録は、支配下したらすぐに1軍戦力として計算できるラインになるまで行わないものではなく、選手のモチベーション向上や故障者が出た場合の緊急措置として行うものが多いため、実績よりも状態で支配下にしています。
 鍬原選手は2勝で防御率3点台中盤と一見すると支配下の数字には見えませんが、4回無失点、6回2失点と徐々に安定してきているため、支配下の可能性を残しています。