読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

18年ドラフト指名組の1年目を振り返る。来季に向けて見えた課題は【支配下指名編】

 ドラフト1位で獲得した高橋選手がローテ定着。戸郷選手が1年目ながら1軍先発で起用。育成1年目の山下選手が高卒1年目で支配下昇格という異例の昇進を果たした18年ドラフト組。

 そんな18年ドラフト組の今年1年の結果を振り返り、来年への課題と戦力としての見込みについて書いていきたいと思います。

 

 

 

【1位指名: 八戸学院大 高橋 優貴選手】

【振り返り】


巨人2018ドラ1髙橋優貴投手のストレート、カーブ、スライダー 阪神×巨人最終戦2019.9.24甲子園

1軍成績:18試合93回5勝7敗防御率3.19

 根尾、辰巳選手とはずしはずれはずれ1位で指名した大卒左腕。最速152キロを記録した速球左腕だったものの、3年以降伸び悩み4年生で制球重視にフォームチェンジ。フォームチェンジ後の実績が少なかったため1年目から先発として計算できるかが不安でした。

 しかし紅白戦・オープン戦と徐々に結果を伸ばしていき、4月4日の阪神戦で初登板初勝利を記録。四球でランナーこそ出すもののそこから踏ん張り試合を大きく崩さないことで試合を作り上げていきました。

 

 シーズン途中では変化球の精度が悪化しストレートの球速も落ち込んでしまい2軍に降格。そこで水野コーチから二段モーション封印を提案され最速149キロを記録できるほどに復活。CS最終戦で先発起用されるなど山口・菅野選手が離脱した巨人ローテを支えました。背番号変更により内海選手がつけていた26番を与えられるなど首脳陣から大きく期待される選手です。

【来年への課題】

  高橋選手は今年1年を投げて完投が0。1年目とはいえ一度は完投を記録したかったところです。その原因は変化球をファールにされることが多く球数を要してしまうことであり、スタミナを消費し制球が悪化するため投げれても7回が限度でした。

 

巨人の高橋優貴投手(22)が7日、秋季宮崎キャンプで初のブルペン入り。「新球の習得」と「スタミナ強化」をテーマに掲げた。

 これまであまり投げなかったカットボールに加え、この日初めてシュートを試投するなど計112球を投げ込んだ。今季の高橋の主な変化球はスライダー、カーブ、スクリューの3つ。「カットは来シーズン頭から投げられればいいなと。緩いボールが多いので、ストレートに近づけたボールがあれば」と、速く鋭く曲がる変化球を目指す。

 原監督からは投球間隔を短くするよう助言を受けた。指揮官は「高橋の場合、課題はスタミナ。息が上がってる状態で投げることの方が多いから」と説明。高橋も「しっかり1年間ローテで投げ続けるってことはスタミナもないといけない」と先発陣の一員としての自覚を口にした。

【巨人】高橋、新球シュート&スタミナ強化「しっかり1年間ローテ」 : スポーツ報知

  来季はスタミナアップとシュート・カットボール習得を課題に掲げています。持ち球であるスライダー・カーブ・スクリューはどれも変化が大きいため、綺麗に決まらないとボールになるうえ高橋選手自身あまりコントロールがいいほうではありません。このため見逃しよりも空振りを奪う・ゴロを打たせる球が求められる中でストレートを見せ球とするカットボールと右打者のインコースを突いて詰まらせるシュートを試しています。

 

【2位指名:明秀学園日立高 増田 陸選手】

【振り返り】


【プロ野球巨人二軍】増田陸の現在。守備練習や打撃練習の様子。ジャイアンツ球場

1軍成績:なし

2軍成績:なし

 

 高校通算34本塁打インコース捌きのうまさから次代のショート候補として獲得された高卒スラッガー。指名時点で手首の故障を抱えていたことから3軍スタートとなっていましたが、練習中に悪化した激痛に耐えられず6月に手術を決断。結果として今年1年はリハビリに費やし、3軍にもまともに出場せず肉体強化に終わりました。

 しかしリハビリ期間のトレーニングにより見違えるほど体を大きくしており、フェニックスリーグでは本塁打も記録しました。ウインターリーグでは打率1割台と低迷していることから実践感覚を取り戻し戦力として計算するにはまだまだ時間がかかりそうです。

【来季への課題】

 増田選手の主な起用ポジションはセカンド・ショート。どちらも若手の台頭が求められるポジションであり、増田選手の成長度合いが今後の内野手補強を左右しています。

 ウインターリーグであまり結果を残せていないことを踏まえると、来季開幕2軍で起用してもらえるかどうかは微妙なところです。吉川尚選手が内野として起用できるようであればその分1軍内野手が1名2軍に落ちるため、そうなれば増田選手は弾かれて3軍での起用となります。ただ来季の1軍内野手が離脱無しに1年過ごせる可能性は低く、そうなれば1・2軍の内野手がスライド昇格していくため、夏ごろに打撃成績を3軍で残せているかが鍵となります。

 

【3位指名:松商学園 直江 大輔選手】

【振り返り】


巨人VS日本ハム⑮ ルーキー直江大輔(松商学園)

1軍成績:なし

2軍成績:3試合5回0勝1敗防御率10.80

 

 当時の木佐貫コーチが惚れた投球フォームに癖のない投手らしい素材を備えた高卒右腕。体も細く育成には時間がかかるタイプでしたが、癖のなさからエースになれる素材として首脳陣からも高く期待おり、原監督からは「若いころの槇原選手のよう」と語っています。

 一方で成績については炎上続きとあまりいいところはありません。ウインターリーグでもより素材型に近かった4位・横川選手のほうが派遣されているように、結果を残せるかどうかのラインでは落選評価となっています。

 

【来季への課題】

 実戦登板において嫌でも目についてしまうのが制球の悪さ。それもぎりぎり外れているというレベルでなく、捕手が飛び上がって捕球しないといけないレベルに外れることが多くなっています。2軍戦初登板となった試合でも結果1回無失点であったものの、2アウトから2連続四球を出してしまうという危なっかしい内容でした。

 首脳陣もそこは課題と考えており、直江選手に投球内容の改善を求めています。

 

巨人の元木大介ヘッドコーチ(47)が16日、侍ジャパンの主砲を相手に見立てて、1球の重みを説いた。

 宮崎秋季キャンプでブルペンに足を運び、ルーキー右腕の直江大輔投手(19)の背後に付きっきり。「コースが甘くなったら1軍の打者は打つよ。その1球で代えられるよ。1軍は厳しいよ」とプロの厳しさを教えた。それでも、制球がばらつく直江に対し、具体的な敵の名を挙げた。「鈴木誠也なら放り込むぞ!」

 巨人投手陣は今季、広島・鈴木に打率4割2厘、6本塁打とメッタ打ちに遭った。打倒・誠也はG投の課題。加えて、若手投手にとっても、最強の難敵としてイメージしやすい日本代表の4番。強打者や苦手な打者を想定し、打者有利のカウントやランナーを背負った状況でどう抑えるか。元木コーチは「いい打者をイメージして投げた方がいい。ただ投げてるだけでは意味がない」と、若手投手陣に「考える投球」を求めた。

 直江は14日のソフトバンクとの練習試合(サンマリン宮崎)で1回4安打4失点。キャンプ中の3度のブルペンでは調子が良かったというが、練習が実戦に即していなかった。「(打者を)右、左と想定していたけど、一発がある打者などは気にしていなかった。ただ投げることになっていた。言われたことを、今まで以上にやりたい」と気を引き締め直した。

【巨人】元木ヘッド、制球ばらつくルーキー直江に1球の重み説く「1軍は厳しいよ」 : スポーツ報知

  上位指名を使って指名した選手でありその分首脳陣に期待も高くなっています。ただ直江選手についてはフォームに大きな癖もなくブルペンでは問題なく投げれていることから、精神的なものが原因の可能性もあります。

 どちらにせよ直江選手については場数を踏んでもらい、そのうえでも制球難が治らないようであれば、大きな方向転換を迫られる可能性があります。

 

【4位指名:大阪桐蔭 横川 凱選手】

【振り返り】


巨人VS日本ハム⑧ ルーキー横川凱(大阪桐蔭)

1軍成績:なし

2軍成績:4試合55回1勝1敗防御率6.00

 190センチの長身左腕として高校時代より注目された先発投手。ただ2年春に大炎上しており、3年生でも急にコントロールが乱れたりと制球に不安がある長身高卒左腕という、非常に怖さを備えたドラフト候補選手でした。

 しかしまさかの巨人が4位で指名。18年時点で先発ローテが怪しかった巨人が素材型高卒投手を獲る余裕があったのかという声はありましたが、18年高卒組の中では戸郷選手の次に2軍先発デビューするなど予想より順調に実績を積み重ねています。

 ウインターリーグでも5回1失点と先発として仕事を果たしており、特にスライダーとカーブの精度がよく、今後の成長に期待が持てる内容となっています。原監督も秋季キャンプの中で期待される一人として横川選手を挙げており、監督から勧められたカットボール習得を目指しています。

巨人・原辰徳監督(61)が14日、ソフトバンクとの練習試合で“ダイヤの原石”を発掘した。それぞれ1回無失点と好投した横川凱投手(19)、育成の与那原大剛投手(21)を高く評価。実戦で見せた“戦いざま”に将来性を感じ取った。指揮官はこの日で秋季キャンプを離れ、15日に帰京する。

 新たな発見に、原監督も心を躍らせた。“試合は力試し”という指揮官のチェックポイントは、日々の鍛錬を信じて練習通りの形で打ち、投げられているか。「実戦的なのは横川とかね。与那原もおもしろかった。練習通りというところを出していたね」。秋季キャンプ唯一の実戦で、キラリと光る原石を見つけた。

 この練習試合は指揮を元木ヘッドに任せ、本塁後方に設置された“原タワー”から選手を観察した。「実戦的な選手とは相手打者、相手投手に、戦っている姿がどう映っているかが非常に重要。そういう点で、僕は今日は(見学した)」。選手の評価点とする、「相手にくみしやすし」と思われない選手の発掘に努めた。

 横川は7回から5番手で登板。大型左腕ルーキーは、球速こそ140キロそこそこながら、打者の手元で動く球でバットの芯を外し、1回無失点、1奪三振。原監督から習得を勧められたカットボールも試投し、指揮官も「球がよく動いていたよ」と高い評価を与えた。

【巨人】原監督“ダイヤの原石”見つけた 左腕・横川&育成右腕・与那原 : スポーツ報知

【来季への課題】

 スライダーとカーブはよい一方、ストレートについては球威に物足りなさが残っています。試投中のカットボールもストレートを見せ球にするタイミングをはずす球であるため、変化球を活かすためにもストレートの球威アップが求められます。

 

 決め球としているスライダー・カーブは落差のあるタイプであり、あまり球速もないため甘く入れば引っ張られやすくなっています。ストレートの球威が足りないためスライダー・カーブに頼り切りになってしまうところがあり、先発として計算するためにはスライダー・カーブ以外の持ち球も求められます。順調に進んでこそいますが、まだまだ成長しなければならない点は多く、すぐに1軍計算するのは難しそうです。

 

【5位指名:折尾愛真高 松井 義弥選手】

【振り返り】


「九州のゴジラ」身長191センチ 巨人・ルーキー松井義弥 シャープなバッティング 2019年5月16日 イースタン・リーグ 巨人ーDeNA

1軍成績:なし

2軍成績:20試合44打数6安打1本塁打3打点0四死球 打率.136

 

 高校通算40本塁打、九州の松井と称された大型スラッガーです。大型スラッガーながら50m6.1秒とそれなりの脚力を保持しており、なにより191センチ90キロという大型恵体野手の指名を巨人が行ったことで、これまで巧打型指名の多かった巨人にとって、ドラフト指名の方針が変わったことを象徴する選手となりました。

 プロ入り後は主にサードスタメンで起用。高校時代はファースト・ライトにもついていましたが、1年目はそのポジションではあまり起用されていません。起用当初はエラーも多く打率も上がらないことから厳しい評価を受けていましたが、徐々にサード守備も安定。打率こそ1割台でしたが2軍でもスタメン起用されるようになりました。

 菊田・平間選手と内野手を2名指名したため、来季は流動的な起用になると思われますが、ライトは現在の巨人では若手台頭が求められるポジション。松井選手の飛躍が求められます。

 

【来季への課題】

 素材型であるため1年目から結果を出せることはあまり期待されていませんでしたが、決して立場は安泰ではありません。今年3位で指名した菊田選手は松井選手と同じファースト・サード・外野がポジションで同じ恵体スラッガータイプ。違うのは右打ちという点だけであり、菊田選手と求められるものは非常に似通っています。

 

 松井選手が求められているのは打撃面で成績を残すことです。恵体パワータイプながら3軍でも2本塁打止まりとなっている理由については、高校時代より足を大きく上げるフォームであること、そして下半身を使って打てていないことから、インコースを詰まらされやすいという課題を持っていました。今年になりあまり足を上げないフォームにこそなっていますが、まだフォームに固さがあり、来年以降も試行錯誤の年度になりそうです。

 

【6位指名:聖心ウルスラ学園高 戸郷 翔征選手】

【振り返り】


巨人・戸郷翔征 日本シリーズ第3戦以来となるリベンジ登板 巨人ーソフトバンク 練習試合1回表 2019年11月14日

1軍成績:2試合8(2/3)回1勝0敗防御率2.08

2軍成績:11試合 42回4勝1敗防御率3.00

 

 特徴的なアーム投法から投げるスプリット・スライダーが武器の右腕投手。U-18にて宮崎代表として出場すると、根尾・藤原・小園選手といった左野手から空振りを奪いまくったことで大きく注目されました。高卒ドラフト組の中でも大きく飛躍した選手であえり、3月26日に早々と2軍デビューを果たすと、初登板初勝利を記録しました。そこから2軍先発ローテに定着すると、桜井選手のスタミナ切れとともに離脱が続く1軍先発を補うため、高卒1年目ながら横浜とのCSがかかった試合で先発起用。白星こそ逃しましたが、4回(2/3)2失点と試合を作り、逆転勝利の立役者となりました。

 その後首脳陣からメジャーに挑戦する山口選手を埋める穴として名前を挙げられるなど期待値も高く、来年どのような成長を見せるかが注目されています。

 

【来季への課題】

 1年目とはいえ早くから実践投入されたこともあり、体の線が細くスタミナ面の不安が懸念材料となります。戸郷選手もその点は課題に挙げており、山口選手との自主トレで体重増も目標にかかげています。今年1年をかけてもあまり体重が増えておらず、来年1軍で投げていくには体重を増やしスタミナをつけることは、戸郷選手にとって必須の課題です。

来年1月は、その山口と沖縄県内で合同自主トレを行う。187センチ、73キロと細身ゆえに10キロの体重増が目標。大食漢で知られる山口からは野球の練習だけでなく、食事による“トレーニング”も行うと通達されている。

 「(自分は)体を見て分かる通り、もともと食べないタイプ。(食事面でも)『死ぬ気で来い』といわれたので必死についていきたい」。肉体改造を施し、球速は最速154キロから大台の160キロ到達を狙う。

 

巨人・戸郷、150万円増の年俸650万円でサイン オフは山口俊に弟子入り - 野球 - SANSPO.COM(サンスポ)

  球速で勝負するタイプのため常時140後半で投げていることや、フォームがかなり体を動かすフォームのため、1年戦えるスタミナをつけなければ途中でばてて球速が落ち、あっという間にとらえられるようになります。低めに投げ込むタイプでなく空振りを奪うタイプのため、球速が落ちれば抑えるのは厳しくなることが予想されます。

 

 戸郷選手の武器は落差の大きいスプリットであり、それ以外だとスライダー・カット・フォークですが、全体的に球速が速い球が多いため、高めから落差を持って緩急を与えれれるカーブを覚えたいところです。

 

 思ったよりも長くなったため、育成指名については別記事にしたいと思います。