かねてから叫ばれていた巨人外野手の高齢化問題。FAで陽選手を獲得したものの問題は解決せず、陽選手の死球による骨折でその問題はごまかしきれないほどの顕著化しました。
かつてレギュラーだった亀井選手も高齢となり衰えは顕著、長野選手も膝の故障時の酷使で劣化、後を担う立岡や重信選手はレギュラーとして力不足であり、橋本選手は毎年離脱など、どの選手もレギュラーを奪えず迷走しています。かつて長野選手の後釜問題について記事にしましたが、もう長野選手一人を何とかすればいい状態ではなくなっています。
2軍も1軍レギュラーを奪える外野手はまだおらず、巨人最下位転落の大きな要因なっています。なぜ巨人外野手は現在のような崩壊した状況となってしまったのか。その原因と解決策を語りたいと思います。
【巨人外野手崩壊の原因】
具体策に触れる前に、なぜ今の巨人外野手が現状のようなスカスカになったのか。その原因は主に二つ、ドラフトにおける外野手獲得の少なさと、コンバートの少なさです。
【①ドラフトにおける外野手獲得・上位指名の少なさ】
17年7位 村上 海斗 育3位 笠井 駿 育8位 荒井 颯太
16年育2位 加藤 脩平 育8位 松沢 裕介
15年2位 重信 慎之介
10年育8位 丸毛 謙一
09年1位 長野 久義 4位 橋本 到
07年4位 加治前竜一
これが過去10年のドラフト指名の中での外野手指名だった選手です。その数たったの五名。この中で高卒は橋本選手のみとなっています。
特に10~14年は指名0となっており、この年代で取られた高卒が今年で22~26歳と脂がのった時期の選手であるため、この年齢層の選手が少ないことが原因のひとつになっています。
また指名順位も長野・重信選手を除き下位指名での獲得となっています。重信選手も賭博の影響で本来より高い順位での獲得のため、大半が下位指名対象だった選手。指名順位は選手のもつ能力や素材を評価したものでもあるため、順位が落ちれば落ちるほど一軍スタメンにたどり着ける可能性は落ちていきます。
将来クリーンナップを担えるような外野手を上位で獲得していないことが問題となります。
【②本格的コンバート数の少なさ】
引用:Yomiuri Giants Official Web Site
外野手は捕手・内野に比べ求められる守備能力が低いため、守備に課題がある選手が打撃を活かすためコンバートされやすいポジションです。梶谷選手(元内野手)や鈴木誠也選手(元投手兼内野手)などが代表例となります。
巨人では最近は和田恋選手や、日ハムに移籍した大田選手、育成ならば投手から外野に転向した長江選手があたります。しかし全体数としてはあまり多くありません。
二軍を見ると吉川大選手や中井選手など、内野手登録選手が外野守備についていることはありますが、それは打撃を活かすためのものでなくサブポジとしての守備であり、それらサブポジションを増やす選手は打撃面での課題を持ち、より出場機会を求めて外野にもつけるように練習しているため、問題となる打撃力のある外野手を埋める可能性は低いものとなります。
【③宇佐見選手の外野コンバートの難しさ】
引用:読売巨人軍公式サイト
17年に左のスラッガー候補として名乗りを上げた宇佐見選手。一方で捕手ながら糖類阻止率が0という致命的な課題を抱えており、出場機会を増やす・左の長距離打者を増やすためにも外野コンバートを叫ぶ声がある選手です。確かに宇佐見選手が外野のポジションを埋めてくれれば外野手問題と左の長距離打者不足問題解決の大きな一歩となることでしょう。
しかし2軍では捕手・ファーストがメインとなっており、外野守備には一切ついていません。その原因は宇佐見選手の走力の低さが原因となっています。
巨人・小林と正捕手の座を争う宇佐見真吾捕手(24)は、男子プロゴルフ・松山英樹や元巨人・鈴木尚広氏が鍛えた「床反力(ゆかはんりょく)」を向上させ、走攻守のレベルアップを目指す。
短所を長所に変える。「1軍レベルの中で成績を残すのはスピードアップが必要」と宇佐見が取り組んでいるのは、普段は聞き慣れない「床反力」だ。人が地面に立てるのは重力があってこそ。だが、一歩歩くだけでもそこに地面からの反発力を受ける。言わば地球から受ける反力。これが強すぎるとブレーキがかかりすぎ、守備でも走塁でもスピードに乗れない。
プロ2年目の今季は21試合の出場ながら打率3割5分、サヨナラを含む4本塁打、8打点をマーク。打撃ではアピールしたが、一塁到達までの足の遅さや、盗塁阻止率0割など瞬発力に課題が残った。
いくら捕手として強肩が活かせるとはいえ、宇佐見選手に外野手をやらせるのは阿部選手に外野手をやらせるようなものです。それほどのまでに足が遅く、センターは論外。ライトも怪しいくらいです。残念ながら宇佐見選手をコンバートさせるにしても、レフト・サード・ファーストのどれかとなり、外野手不足問題の解決には至りません。
【外野手問題解決に向けて】
ここまではなぜ巨人外野手層が焼け野原状態になったのかを2つの問題点から解説しました。ここからは外野手問題をどのように解決するかを考えていきたいと思います。
【①18年・19年の大卒・社会人外野手を獲得】
まずは即戦力となる大卒・社会人外野手をドラフトで獲得し、現状の1軍外野手層を整えることが求められます。そこで18・19年の指名候補の中で、現在の巨人で不足しているライト・センターポジションで中・長距離打者を挙げてみます。
【18・19年の大卒・社会人中堅・右翼手候補】
これでも近年に比べれば外野手は揃っているほうであり、スラッガー候補の外野手は大半が高卒で指名されるため、どうしても大卒・社会人外野手は中距離・巧打型が中心となってしまいます。
このため大卒・社会人獲得に関してはクリーンナップというよりも、安定した起用が出来るライト・センターを揃え戦力を整えることが目的となります。クリーンナップ候補はやはり高卒選手を育てることが一番の近道になります。実際の指名としては上位で1名、6~8位の下位で1名でライト・センターを一人ずつ補強する形になると思います。
【②4~5年後を見据えた高卒中堅・右翼手の補強】
引用:読売巨人軍公式サイト
大卒・社会人でもある程度の長打力を持った選手を獲得できるレフトと違い、ライト・センターで守備と長打を兼ね備えた選手を即戦力で獲得するのは難しく、それらのポジションが出来る高卒選手を育てていく必要があります。またレフトは助っ人外国人のメインポジションのひとつであるため、レフトメインだと外国人との競争にも勝ち抜かねばならず、厳しいハードルであるため、なかなか若手が出てきにくいポジションになります。
スラッガーを育てるのは時間がかかることであり、今年1軍戦力として定着しつつある岡本選手も4年かかりましたが、それでも22歳。これも高卒だからこそのメリットとなります。
本当であれば18年に2名は獲得したいところですが、現在の巨人は先発・中継ぎも補強ポイントであり、外野手だけを優先できる状況ではありません。年齢をばらけさせる意味でも18・19年で1名ずつの補強が現実的な流れとなるでしょう。
【③打撃型内野手の本格コンバート】
和田恋選手のコンバートこそあったものの、和田選手は強肩こそあれど鈍足であり、ライト守備をする機会はありますが、メインはレフト守備になっています。そのためライト・センター守備適正のある内野手を本格コンバートし、内外野のバランスを取ることも解決策のひとつになります。
それでは、センター・ライト適正とは何なのか。主に3つとなります。
①遠投105m以上の強肩を有すること
②打撃成績で一定の成績を出していること
③俊足とはいわないまでも、一定量の走力を有すること
ホームへの返球が求められる外野は強肩は必須であり、守備範囲が必要となるため走力も必要。打撃型外野手を求めたコンバートのため、打撃成績に課題がある選手も除外されます。このため弱肩の田中俊太選手や、打撃に課題がある吉川大選手や増田選手も除外となります。
引用:読売巨人軍公式サイト
対象となる選手については、ライトなら粘りの打撃が出来るようになったが、吉川尚・田中選手にセカンドをとられ、1軍では代打・ファースト守備固めに留まっていた辻選手。
センターならパンチ力がついてきたが、オープン戦のショート守備でエラーを連発した山本選手。同じく遠投120mの俊足スイッチヒッターで外野経験もある若林選手が対象となります。育成選手については、内野の大半が高卒1~2年目であるため対象からはずしています。
去年までなら2・3軍の試合数の関係から内野手も数が必要だったため、サブポジコンバートは出来ても本格的コンバートは難しいものとなっていましたが、今期から3軍の試合数が減らされたため、1~2名を本格的にコンバートする余裕も生まれています。
【総評】
即戦力獲得の意味合いであればFAも選択肢の一つですが、昨今のFA宣言無しの長期契約の流れを見る限り、FA獲得の方法も現実的とはいえないでしょう。FA宣言をする選手もより高い契約を求めてというものでなく、出場機会を求めてのFA宣言が増えているため、即戦力として計算しにくいものとなっています。そのため今回は解決策にFAを入れませんでした。
この外野手問題は1~2年で何とかなるものではなく、少なくとも4~5年は見ていかなければならない問題となり、それだけ巨人の低迷が続くことも意味しています。
しばらくはファンにとっても我慢の年となることでしょう。