読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

ドラフト市場において大卒中継ぎ投手はなぜ下位指名なのか。過去の指名傾向から読み解く

 

ドラフト会議では毎年、育成を含め100人超が指名され、ほぼ同数の選手が構想外となる。今季の日本人選手の在籍平均年数は5.7年。5位以下(育成含む)で入団し、同じ球団に5年以上在籍している選手は111人。4位以内は258人で、下位指名から生き残るのは難しい。球団別ではオリックス13人、ソフトバンク12人、西武、DeNA11人、日本ハム10人となっている。
 最多のオリックスの出世頭は、15年10位の杉本だ。昨季の本塁打王。1年目の年俸600万円が、今季は約11.7倍の7000万円に。入団4年以内にも中川圭(18年7位)、阿部(20年6位)、宇田川(20年育成3位)らが今季の優勝に貢献。スカウトの眼力が光る。

 セではDeNAで下位指名選手の活躍が目立つ。1000安打を達成した宮崎は12年6位。今季年俸は球団日本人野手最高の2億円。20年首位打者の佐野は16年9位で、支配下全体の指名順は87人中84番目だった。今季キャリアハイの94試合出場の楠本も17年の8位で、支配下ではブービー指名。いずれも今季の躍進の力になった。

 セ王者のヤクルトは最少の6人だが15年5位の山崎、17年6位の宮本らが台頭。中日は5位が“当たり順位”で大島、祖父江、阿部、藤嶋、さらに3年目の岡林も今季ブレークした。育成からの成り上がりが多いのはソフトバンク支配下5位以下で5年以上在籍は4人しかいないが、千賀、甲斐、牧原大、周東らが主力に成長している。

ドラフト下位指名からでも1軍戦力へ台頭 スカウトの眼力光るオリックス&DeNA― スポニチ Sponichi Annex 野球

 22年ドラフトにおいて大卒投手は育成も含め48名。過去4年では121名指名されています。しかしその多くは大学では先発として起用されていた選手が多く、中継ぎとして起用されていたほんのわずかとなります。

 大学で中継ぎとして起用されている選手はなぜそれほどまでに指名が少なく、指名順位も低いのか。過去4年間の指名とその後の起用法を踏まえ、その原因を見ていきたいと思います。

 

 

【過去4年の指名について】

 下記の表は19~22年のドラフトにおいて指名された大卒選手の一覧です。ちなみに各色はこのとおりとなっています。

:大学では先発、プロでも先発

:大学では中継ぎ、プロでも中継ぎ

:大学では先発、プロでは中継ぎ

:大学では中継ぎ、プロでは先発

未:プロでは未登板



 ちなみに赤は30名、青は18名、緑は38名、黄色は2名となっています。大学では先発していた選手が88名中68名とかなりの割合となっているため、やはり先発として起用されていた選手のほうが指名される割合はかなり高くなっています。

 また大学では中継ぎ・リリーフ起用されている青色・黄色の選手は多くが下位・育成指名が多く、上位は巨人1位・大勢選手や阪神3位・佐藤選手、楽天3位・津留崎選手くらいと、やはり過去の指名から見ても中継ぎ選手は上位指名の可能性は低くなっています。

【なぜ大卒中継ぎは指名されないのか】

【①:チームのエース投手は先発にまわされる】

 野球が一番上手い選手が投手をさせられる、なんて言葉があるとおり投手はチームの柱であり、特に先発はその試合の勝敗を左右する重要なポジションとなります。そのため先発はチームの投手たちのなかでも高い能力を持つ選手が起用されるため、自然と評価も高くなり、成績も大きく目立つため指名されやすくなります。

 また大学野球プロ野球ほど日程が過密でなく、東京六大学であれば毎週土日(週によっては月曜)の2試合。首都大学野球も同じく毎週土日。このためプロ野球ほど投手数が必要ではなく、リリーフを育成するよりも先発を2人用意し当日先発しない方にリリーフをさせたり、来年以降のエース候補に中継ぎをさせ現在の先発が卒業後に先発として起用するといった流れが多くなっています。リリーフも最終的には先発として結果を残す方が多く、中継ぎ専というのはどちらかというと先発から漏れ、先発が投げ切れなかった残りのイニングを凌ぐための起用が多くなっています。

 慶応・橋本選手のようにリリーフとして盤石の評価を得ていれば話は別ですが、それでも4位指名と上位ではなかったため、中継ぎのみの起用で指名を狙うのはかなりハードルが高くなっています。

 

【①:大卒選手というどっちつかずな評価】


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 指名において重要視されるのは伸びしろと即戦力性。高卒であれば伸びしろが高く評価され、社会人であれば即戦力が高く評価されます。即戦力と評価されれば中継ぎであっても一定量指名されており、社会人ならばヤクルト3位・柴田選手やロッテ5位・八木選手や日ハム4位・鈴木選手や6位・宮内選手と上位でないにしてもある程度指名されています。もちろん社会人投手であっても先発をしている選手のほうが指名数は多いものの、大卒に比べると指名数は多くなっています。

 その原因は大卒という素材型・即戦力どちらともいえない評価。先発から中継ぎへの起用は多いものの、必要なスタミナや球種が増える中継ぎから先発への転換は成功率が低く、起用の幅が狭いことは伸びしろの低さと評価されるため、素材型としての評価が落ちます。

 また即戦力としては1~3位の上位指名候補は1年目から1軍で起用されていますが、下位指名は1年目から起用されている選手は低く、19年~21年の3年間で1軍で20試合以上、もしくは10試合以上防御率2点台以下で起用された選手は

楽天6位:西垣選手   24試合23(2/3)回 防御率2.66

日ハム8位:北山選手  55試合51回      防御率3.51

西武育4位:水上選手  60試合56回      防御率1.77

オリ育4位:宇田川選手 19試合22(1/3)回 防御率0.81

SB育2位:大関選手  21試合101 (1/3)回 防御率2.93

ヤク4位:大西選手   43試合58(2/3)回 防御率4.45

 この6名であり、全員が大学時代は先発として起用されていた選手。高卒ほど大きな伸びしろがなく、社会人ほど1軍戦力としてどのようになるかが計算しにくい大卒下位、さらに中継ぎ専となると指名は避けられる傾向があります。

 

【まとめ】

 素材型でも即戦力、どちらでも評価しづらい大卒下位指名選手は当たれば大きいものの、1軍と2軍を往復し定着できない選手も数多くいます。特に中継ぎ専となると起用の幅も限られるため、大卒プロ入りよりも社会人で即戦力としてプロ入りを狙う方が指名の確率は上がっています。

 また大卒選手が指名を狙うには先発をしていることが最低条件である場合が多く、この流れは今後も変わらないと思われます。特に3年生まで中継ぎだった選手が4年になると先発になり一気に指名候補になることも数多くあるため、やはり大卒選手は4年目で先発として結果を残せているかどうかがカギとなります。