読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

コロナによるドラフト戦略への影響と救済案について

 今回は新型コロナがドラフト戦略・市場にどのような影響を及ぼすか、またその救済策について検討していきます。

 

 

【コロナの影響はドラフト市場にも影響】

 

社会人野球を統括する日本野球連盟JABA)は2日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、7月開催予定の日本選手権(京セラドーム大阪など)を中止すると発表した。中止は東日本大震災が発生した2011年以来で2度目となる。5月下旬の全日本クラブ選手権(メットライフドーム)なども中止。JABAは4月末までのオープン戦自粛を要請した。

日本選手権は従来は秋の開催。当初は今夏に東京五輪パラリンピックが開催予定だったため、警備上の理由などから例年7月に行われる都市対抗大会(東京ドーム)を11、12月に移行。日本選手権の開催を早める日程となっていた。〔共同〕

社会人野球、7月の日本選手権が中止 新型コロナで :日本経済新聞

 コロナにより高校選抜や社会人日本選手権は中止。都市対抗や野球大学リーグも延期が続いており、開催が危ぶまれています。

 このためスカウトが選手を見に行くことが出来ず、練習試合が開催されたとしても接触を避けるため訪問出来ない状況となっています。

 この影響を特に受けているのが高校選手であり、一年で大きく伸びる高校生は3年の選抜・甲子園で一気に注目株になることも珍しくありません。

 

【高校生候補はプロ志望届を出さず凶作の年になる恐れも】

 全国大会でアピールができない以上、去年から注目されていた選手以外は上位指名の可能性は低くなります。そうなれば進学かプロかを迷っている選手は届を出さない可能性が高くなり、指名可能選手自体が少なくなることから、元々高卒選手は1位候補がいなかった20年は高卒凶作年となる可能性もあります。

 

【指名数にも影響が】

 アマチュア野球だけでなくプロ野球も開幕延期が続く中、懸念されるのが指名数への影響です。支配下数は70名が上限のため、ドラフトで指名するにはそれだけ枠を空ける必要があり、それが戦力外通告です。しかし試合がなければ結果をもとに判断することが出来ず、かといって去年の内容で戦力外をしようものなら選手は納得できず、選手会との衝突は避けられません。

 枠が空けられなければ選手をとることも出来ない為、数も取れない、見極めも出来ないという八方塞がり状態となっています。

 

【最も影響するのが育成指名】

 育成指名の多くは競合チーム以外で全国大会への出場機会が少ないチームです。そのような選手がいつ指名候補に挙がるのか、それは最終年度の地方大会で注目選手と対戦するときです。巨人に育成8位指名された荒井選手は同年の注目選手だった牧投手(阪神5位指名)を見に来たスカウトが、牧選手からヒットを打ったのを見て注目したと語っています。

 

 しかし地方大会は相次いで中止が発表されており、そのような全国区でないが光るものがある選手のアピールの場が無くなっています。去年の時点で名前が挙がっている選手は悪くても育成2位までで消えることが多く、スカウトも有限のため練習試合一つ一つを見に行くのは難しく、ある程度チームが集まる大会でないと注目されていない選手をチェック出来ません。そもそもアピールの場が無くなっていることから志望届を出さない選手が増える可能性が高く、そうなれば指名優先度は繰り上がっていくため、育成指名時点で選手がどれだけ残っているかもわかりません。戦力外が出来ないことから選手数を減らせず一人辺りの施設利用時間も減ってしまうため、指名はトレーニングがいらない即戦力に偏る可能性があり、例年に比べ育成指名数は減ると思われます。

【考えらえる救済案】

【①:ドラフト会議の延期】

米大リーグ機構は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、6月に予定していたドラフト会議を7月に延期することが濃厚になったと26日、スポーツ専門局ESPN(電子版)が報じた。

ドラフトはかねて中止も取り沙汰されていた。今季は試合数の減少が必至で、各球団の収入減が懸念される。アマチュア選手との契約金を抑制するため、指名選手を減らす可能性もあるという。〔共同〕

大リーグドラフト、7月開催か 新型コロナで延期 :日本経済新聞

 すでにMLBは6月のドラフトを1ヶ月延期する方向で動いています。このことからNPBでも同様の措置が予想されます。日本のドラフトは10月のため、その頃コロナがどうなっているかは不明ですが、仮に12月に延期した場合どのようなメリットがあるかというと、秋季大会の結果を踏まえて評価することができます。大学であれば秋季リーグ。社会人ならば都市対抗(今年はオリンピックの影響で11月に実施予定)の内容を踏まえて戦略を練ることが出来ます。選手たちにとってもアピールできる場所が増えるため、指名候補として挙がるメリットがあります。

 

 問題は高校生です。高校3年生の多く就職活動や受験に専念するため夏の大会が終わると引退します。このため秋季大会を開催できても、出場する選手は2年生以下の選手となってしまいます。かといって3年生の引退を遅らせれば上記の活動に支障をきたすためスケジュールをずらすわけにもいきません。このため延期案は高校生にとってはあまり救済とはなりません。

【②:期間限定の支配下枠の増設】

2018/5/22 坂本工宜 (読売ジャイアンツ) DeNA2軍戦 1イニング - YouTube

去年戦力外となった元巨人・坂本工選手

 戦力外ができないからといってドラフトで選手を指名できないとなれば、球団の戦略にも大きな影響が出てしまう上、指名解禁されたドラフト候補選手たちにとっても死活問題です。大卒以上の選手は1年歳をとるだけで指名候補から外れてしまうこともありえるため、この1年でプロへの道を失ってしまう選手もいます。

 そこで案として挙がるのが一時的な支配下枠の増設。現役ドラフトの存在を考えると恒久的な増設の案もありますが、育成選手もいるなかで支配下選手まで増えてしまうとトレーニングスペースがキャパオーバーしてしまい、出場機会が得られないどころかトレーニングすらままならない危険性も出てきます。また年俸を払いたくない球団にとって恒久的な支配下枠の増加はデメリットのため、反発する球団も出て支配下数を増やすこと自体がとん挫する可能性もあります。

 

 このため支配下枠の増加もあくまでドラフト救済のためのものであることを第一にしなければなりません。また一時的な増設であるため、最終的には70名に戻す必要があります。かといって翌年に70名に戻すなれば一気に戦力外を行う必要があり、戦力外候補が少ない球団は結局指名数を絞り込まざるをえません。

 それを防ぐ方法としては数年かけて徐々に支配下数を減らしていくというものです。75→74→72→70といったようにすれば各球団もある程度調整することが出来ます。

【何名枠を増やすか】

 次の問題と支配下枠を何名増やすか。案としては5名か10名かです。5名の場合は単純に増やすだけで問題ありませんが、10名の場合は制約を設ける必要があります。枠が80名となればそれだけ助っ人外国人や支配下昇格できる選手も増えるため、ドラフト救済のためでなく単純な戦力強化になってしまうため、あくまでドラフトのための枠増設としなければなりません。

 

 具体的な策としては支配下登録数が80名を超えている場合、ドラフト指名以外での支配下登録を禁ずるといった措置になります。つまり80名を超えている球団については、FA・助っ人外国人・支配下昇格・自由契約、戦力外獲得が出来ないといった措置になります(1軍起用できないことから育成契約は可)ただし支配下枠が増えないトレード(金銭トレード以外)は可とする(選手の流動性の確保や飼い殺しを防ぐため)

 

 【最後に】

 現状救済策がないのが高校野球。大会ひとつをとっても参加チームが多いため延期をしようにも調整が必要な学校が多く、どうしても中止が相次いでいます。秋にまでコロナが落ち着かなければ高校選手にとっては苦難の年となってしまいます。