読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

読売ジャイアンツ2023年支配下ドラフトを振り返る。中堅層を焚きつける徹底的な即戦力指名。

 ◆2023年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD(26日)

 巨人は5選手で支配下選手の指名を終えた。

 1位は日本ハムとの競合で中大・西舘勇陽投手の交渉権を獲得。2位はHonda鈴鹿・森田駿哉投手、3位は日立製作所・佐々木俊輔外野手、4位はNTT西日本・泉口友汰内野手、5位は日本生命・又木鉄平投手を指名した。

 2~5位までは異例の4人連続社会人を指名。巨人が支配下で高校生を指名しなかったのは、ドラフトが始まった1965年以降初めてだった。

https://hochi.news/articles/20231026-OHT1T51245.html?page=1

 

【まさかの5分の4社会人指名という年に】

 2023年ドラフトは支配下選手については5名を指名。1位指名を公言していた中央大・西舘選手を日ハムとの競合の末に獲得。そして2位から5位はすべて社会人選手という17年ドラフトを超える社会人指名に振り切りました。こんな極端なドラフト予想できるわけがない。

 このため支配下では高卒指名は0名。逆指名時代を覗くと支配下で高卒指名0は初めてという事態となります。

 指名の傾向としては中堅層が結果を出せず薄い層を徹底的に狙ったドラフト。今年の巨人は左先発の薄さ、中継ぎの弱さとセンター、そして1・2番を打てる野手が補強ポイントでした。

 その中で年齢は27歳ながら今年最速154キロを記録し先発として安定して結果を残し先発・リリーフ両面で期待できるHonda鈴鹿・森田駿哉選手を獲得。そして3位では身体能力型ながら打率3割を残しセンター・ライトで起用されている日立製作所・佐々木俊輔外野手。右投げ左打ちショートと門脇選手と被るものの、安定した守備ながら打撃はパンチ力もありさらなる伸びが期待されるNTT西日本・泉口友汰内野手。そして左腕中継ぎの補強として日本生命・又木鉄平投手を獲得。

 岸田選手が1軍で徐々に起用され山瀬選手もフェニックスで打撃で結果を残しているためか支配下で捕手使命は0。明らかにレギュラーを掴めていない中堅内野・外野手に対する警告であり、血の入れ替えの覚悟を感じられます。

 

【1位指名:中央大・西舘 勇陽選手】 大卒右腕投手

1位 西舘勇陽(にしだて ゆうひ)
投手 2002年3月11日生まれ・21歳
185センチ 79キロ 右投右打
中央大

■最速155キロの本格派右腕。185センチのすらっとした体格から常にクイックで投球し、常時140キロ台後半から150キロ台の角度あるストレートを投げ込む。カットボール、フォークといった変化球もしっかり操ることができ、ランナーが出ても投球スタイルが変わらない点は試合での信頼度が高い。(円谷英俊スカウト)

西舘勇陽投手を1位指名、交渉権を獲得ードラフト会議 | 読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト


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  最速155キロ、常時クイックで投げ込むパワータイプ右腕。3年生まではリリーフでしたが4年春に先発として起用されますが制球が安定しない課題を抱えていました。しかし秋に制球が大きく向上。一気に即戦力候補にまで上り詰めました。

 巨人は菅野ー山崎ー戸郷ーグリフィンーメンデスー赤星選手が今年の主要ローテであり、山崎選手が安定感が増し赤星選手がカーブを覚え先発として台頭。さらに菅野選手は球速が復活し、ここに大きくフォームを変えた横川選手が起用されていました。しかし菅野選手は来年35歳で故障による離脱も目立つようになり、山崎選手はTJ手術を経験しているためあまり無理はできません。横川選手も安定性に課題があり、井上選手は先発としては安定性×。先発の強化は必須でした。

 西舘選手はリリーフでも起用されているため大勢選手が本調子でなくパワータイプリリーフが不足する中継ぎにも回せるなどつぶしが効く選手。巨人は1位指名の大卒・社会人は先発スタートにすることが多く、大勢選手は桑田監督の押しがあったことでリリーフとなりましたが、先発スタートにあると思われます。ですが完全な即戦力とはいえず、現在も細かなフォーム修正を随時行うなど未完成さもあることから、1年目は5勝すれば順調といえるタイプであり、将来性も期待されています。

 

【2位指名:Honda鈴鹿・森田駿哉選手】解禁済左腕投手

 

投手 1997年2月11日生まれ・26歳
185センチ 88キロ 左投左打
Honda鈴鹿

■185センチ88キロの大型左腕。140キロ後半のストレートとカット・ツーシームでストライクゾーンを横に広く使う投球スタイル。左打者にツーシームを精度高く投げ込めることができ、対左打者のリリーフ適性もある。計算して打ち取って行ける総合力の高い投手。(木佐貫洋スカウト)

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 2位で獲得したのはまさかの解禁済社会人投手。森田選手は高校時代は高卒トップクラスの評価をされ法政大に入学後、肘を故障し手術をするも4年生にわずかに投げた程度。ホンダ鈴鹿に入社後も登板するものの、ドラフト候補として見られるほどの注目度はありませんでした。

 今年で社会人5年目と去年指名した船迫選手以上の年齢となっていますが、今年になり目に見えての成長を見せる選手。社会人代表のアジア大会では最速154キロを記録し中日が指名候補に挙げていました。先発としても今年は安定感が向上しており、一気に即戦力候補まで成長。

 特に左打者を詰まらせるツーシームでランナーが出ても崩れないため、スカウトは対左のリリーフとしても見ています。左の中継ぎは中川・バルドナード選手が勝ちパターンとなり、高梨選手も勤続疲労の懸念が出ています。若手左腕中継ぎがおらず8・9回までの左の中継ぎを補強した形となります。

 

 

【3位指名:日立製作所・佐々木 俊輔選手】 社会人左外野手

外野手 1999年11月6日生まれ・23歳
174センチ 80キロ 右投左打
日立製作所

■広角に長打も打てる打撃能力の高い外野手。身体に力強さを感じる三拍子揃った選手。将来、トリプルスリーも狙える逸材。(實松一成スカウト)

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 センター・ライトを守れる左打ちの俊足外野手。1年目はコロナの出遅れもありあまり活躍できなかったものの、2年目は体重を10キロ増やし長打力を強化し、打撃フォームを大きく改造したことでしっかりとしたスイングができるようになりました。

 丸選手が衰えを見せセンターからライトにコンバートされた一方、岡田・重信・松原選手が定着できず萩尾選手も1年目は2軍メイン。助っ人のブリンソン選手も波が激しすぎて計算できないなど、今年の低迷の原因はセンターが穴となっていることでした。

 門脇選手こそ台頭したものののリーグ盗塁数5位と機動力に欠けており、1・2番を任せられる俊足センター・ライトを補強しました。

 

【4位指名:NTT西日本・泉口 友汰選手】社会人左内野手

内野手 1999年5月17日生まれ・24歳
178センチ 80キロ 右投左打
NTT西日本

■華麗な守備とパンチ力のある打撃が持ち味の大型内野手。思い切りの良いスイングで長打を打つことが出来るのも魅力の一つ。将来的には打線の中軸を担える能力を持つ。(桜井俊貴スカウト)

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 4位では2年目の社会人内野手。チームでは1年目からショートとして起用された安定感とパンチ力のある打撃が魅力。2年目は調子が落ち込んだものの、持ち前の技術と打撃力は魅力であり、本人は本職のショート以外でもレギュラーを狙いたいと意気込んでいます。

 門脇選手が坂本選手をサードコンバートさせるほどの活躍を遂げましたが、増田陸・北村・若林・湯浅選手と中堅どころの内野手が結果を残せておらず、香月・中島選手を戦力外にしたことからも中堅内野手の若返り・粛清を図っています。打撃で.250を残せるユーティリティータイプがおらず、スタメン内野手に代走を出すと途端に打撃力が落ち込むために延長戦を勝ち抜ける力が足りていませんでした。

 打撃の調子が落ち込んでいるためまずは2軍スタートで打撃を伸ばし、1軍内野手が不調・故障した枠として昇格したり将来的に坂本選手が引退して内野sが大きく動いたときに空いたポジションに入ることが期待されます。そのためどのポジションの守備もある程度こなせる必要があります。

 

 

【5位指名:日本生命 又気 鉄平選手】解禁済社会人左腕投手

投手 1999年2月12日生まれ・24歳
182センチ 92キロ 左投左打
日本生命

■140キロ後半の球威のあるストレートが魅力のオーバーハンド左腕。ストレートに力強さがあり、クロスボールは非常に角度がある。曲がり球、落ち球も空振りが取れて武器になる。先発、中継ぎ両方で即戦力の力がある。(岸敬祐スカウト)

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  最速149キロ、チームでは主に中継ぎとして起用される左腕投手。1年目は140前半だった球速もパワータイプに方向転換したことで飛躍。出所が見にくいフォームから同じ腕の振りで140中盤のストレートとスライダー・カット・ツーシームで打ち取っていくパワースタイル。

 代木・山田選手が故障し高梨選手も勤続疲労。今村選手も負けパターン止まりと左腕中継ぎ不足が顕著。中継ぎとして3~6イニングを投げる救援登板も多く、ある程度のイニングを投げられる中継ぎ・左中継ぎの強化のために獲得されました。派手さはないもののある程度まとまった選手となっています。

 

【なぜこのような指名となったのか】

 水野スカウト部長は今回のドラフトは「優勝できていないため即戦力中心とした」と語っています。またここ3年で獲得した育成高卒選手たちが順調にそだっており、京本選手は2軍先発。田村選手も先発候補。吉村選手はフェニックスリーグで5試合7イニング無失点と好投を続けています。野手でも相沢選手や中田選手、岡本大選手と期待の選手が表れており、今年は各球団の傾向を見ても代表クラスがプロ志望を出さない高卒選手不作年となっていたため、中堅層に発破をかけるためにも即戦力指名となりました。

 2位・5位が左腕投手:高橋優・今村・山田・大江

 3位がセンター:重信・松原・オコエ

 4位がショート・サードもできる内野手:北村・菊田・吉川・増田陸・増田大・湯浅

 24~27歳の即戦力が中心のため、この辺りの中堅選手に対する「お前らが戦力として見れないからこのドラフトだぞ?」という警告でもあります。

 右の中継ぎが1枚欲しかったところですが、各球団も5名前後で指名を終了しており、上位と下位の選手のレベル差が明らかに大きかった年と各球団は判断したようです。