(第105回全国高校野球選手権記念長野大会、7月8日開会式)
松商学園の速球派左腕、斎藤新太(3年)は昨年の7月12日のことをよく覚えている。「ケガもして、何もできずに終わって。今もあの試合を思い出すことがあります」。長野日大との初戦は、前年の決勝と同じ組み合わせ。大会屈指の好カードだった。
雨の中、松商学園は初回の守りでいきなり3安打2四球を喫した。初回で1死しか取れず、満塁で先発からの継投に。緊急登板した2番手投手が斎藤だった。
「準備はできていたし、球は良くて、今日は良いかも、と思っていました」
斎藤が投じた2球目、相手が仕掛けたスクイズはマウンド横へのハーフライナーに。捕ろうとした矢先、野手と交錯した。球がこぼれ、グラウンドに倒れた。立ち上がれず、鎖骨と左すねを骨折していた。なおもピンチが広がる中、たった2球の交代劇だった。「今思えば事前の想定が足りなくて、声を掛け合う余裕も無かったんだと思います」。松商学園は3―6で初戦敗退を喫した。
斎藤は140キロ超えの直球で押す県内屈指の速球派だ。あの夏以来、復帰に約4カ月を要した。選抜大会出場をかけた秋の北信越大会にも出られず、チームに迷惑をかけたという思いがある。
復帰後の冬は、落ちた筋力を戻そうとランニングや筋力トレーニングに時間をかけた。長いイニングを想定して体を作ってきたつもりだ。リハビリメニューを支えてくれたのはエースの大塚舜生(3年)や竹内海翔(同)ら同学年の投手陣だった。
「秋の大会は2人がすごく頑張ってくれていた。同時に、負担が大きかったと思う」。春は地区大会で敗退したが、ウェルネス長野戦では1イニングを任され、2奪三振。実戦に向け、調子は上向いている。
「今年こそ大事な試合で任せてもらって、勝ちに導きたい。去年のことは割り切って臨みたい」とリベンジを誓う。
【斎藤選手の紹介】
175センチ73キロ 左投げ左打ち
変化球:スライダー
ノーワインドアップから上半身をあまり捻らずにオーバースローの角度から投げ込むフォームから最速143キロ、常時130中盤のストレートを投げ込む左腕投手。120キロ台のスライダー、100キロ台のカーブを投げ込んでいきます。
武器は切れのあるストレートとテンポよく投げ込んでいく投球術。投げ下ろすフォームから角度のあるストレートに多くの打者が差し込まれており、さらにあまり間を置かずどんどん投げ込んでいくテンポの良さで打者に考える暇を与えず、ストレートを引っ張ろうとスイングする打者のタイミングを外すスライダーとの緩急で打ち取っていきます。
チームでは主に先発で起用。2年夏の試合でランナーと交錯し骨折。1イニングも投げることができずチームも敗退してしまったことで、オフでは治療の間に落ちた筋肉とスタミナアップを目的とした体づくりのためにランニングと筋トレを実行。
速球でどんどん押していける左腕としてさらなる成長が期待されます。
【指名への課題】
課題は投球の引き出しの少なさ。投内容はストレートが8割以上、そこにスライダーを織り交ぜるものとなっています。しかしスタミナが切れてくると球のリリースが早くなりスライダーが抜けやすくなるため、腕を振って投げ込めるストレートの割合が増えています。
このため5回以降に四球からランナーを貯めてしまう展開によりピンチを招いており、カウントを稼げる球がないため制球が悪くなると投球を組み立てられなくなります。ランナーが出るとランナーを気にして投球テンポも悪くなっており、武器の一つである投球テンポの早さも失われています。
【指名順位予想】
ストレートは魅力ですが、スタミナが切れると球離れが早くなり抜け球が多くなることや、持ち球自体が少ないため安定してカウントを稼げず後半になると目に見えて球数が増えてしまうなど課題は数多く抱えています。
今後はさらなるスタミナアップに投げ下ろすフォームと角度あるストレートを活かすためにフォーク系の球の習得。スライダーの精度アップが求められます。
170センチ台と素材としても大きく目立つ存在でないため、現状では指名漏れの可能性が高くなっています。