読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

順調に成長する巨人育成3位・吉村優聖歩選手。数字と登板内容から見る課題とは



独立リーグ交流戦 巨人3軍10―0BC茨城(18日・土浦)

 巨人3軍がBC茨城に10―0で快勝した。

 先発の育成3位ルーキー左腕・吉村優聖歩(明徳義塾)は4回55球4安打5奪三振、無四球で無失点と好投した。

 昨年のU18W杯で日本代表として浅野翔吾とチームメートだった吉村。試合後には「ストライク先行で投げることができて良かったです。ヒットも打たれましたが、ピンチでもしっかり気持ちを入れて投げて無失点で抑えられて良かったです。今日は浅野がプロ初ホームランを打ったので、いつか自分が一軍で投げて、浅野と2人でヒーローインタビューを受けられるように頑張っていきます」とコメントした。

【巨人】3軍戦で好投の吉村優聖歩「いつか浅野と2人でヒーローインタビューを受けられるように」 : スポーツ報知

 

【吉村選手のこれまでの起用と活躍】


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 22年育成3位で入団。首脳陣が変則左腕の補強を要望しており、セカンドを向くほどに大きく体を捻り投げ込む変則左腕だった吉村選手が指名されました。

 巨人は高卒1年目の選手は体づくりをメインとするため試合数の少ない3軍がメインになることが多く、吉村選手も主に3軍で1~3イニングと短いイニングを投げています。吉村選手自身も今年は投球練習より体づくりをメインに行っていきたいと語っており、タンパク質中心の食トレで体重を増やしています。

 BCリーグでは6試合に登板し9イニング4自責点防御率4.00。ただしこの成績は6月10日の神奈川FD戦で3失点したところが大きいため、慢性的に失点しているわけではなく、8月18日のBC茨城戦では最長の3イニングを投げており、平均球速も135~140キロを出せるようになっているため、高卒1年目でかなりの変則左腕としては順調な成長を遂げています。

 

 

【数字から見る吉村選手の課題】

 吉村選手に限らず変則左腕は一つの課題を抱えており、それは左右どちらかを極端に苦手とすることです。変則サイドスローである大江選手は対左は被打率が1割台であるのに対し、3割以上の被打率となっています。一方で同じ変則左腕の高梨・中川選手は左右どちらも被打率に大きな差がなく、安定して戦力として見込むには左右どちらでも安定して抑えられることが重要となります。

 上記はBCリーグ登板時の左右別成績(練習試合の成績は除く)。吉村選手は対左が1割台に対し対右が2割台。しかし奪三振率は左の方が倍近くの数字となっており、左の方が得意となっています。

【登板内容から見る吉村選手の課題】


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 吉村選手はなぜ右からは三振が少ないのか。その原因は使える球種の少なさです。変化球はスライダー・チェンジアップが中心。左に対してはストレートと同じ軌道で抜けていくスライダーの二球種で打ち取れていますが、右に対しては2ストライクから粘られることが多く、その原因が右打者のひざ元まで変化する変化量のある球がないこと。球速も120キロ台で小さな変化のため空振りを奪えず、また厳しいコースを狙うため指に引っ掛かりカウントを悪くしています。

 また吉村選手のフォームも理由の一つ。吉村選手は体を大きく捻り、リリースする直前まで腕が全く見えない変則型となっています。しかし吉村選手のフォームは左だと球の軌道も見にくくタイミングを合わせにくいため打ち取れていますが、右だとフォームの動き自体は見やすいためタイミングがずれることが少なく、芯には当たっていないもののタイミングが外れた空振りが少なくなっています。

 加えて外に向けて投げるため死球のリスクが少なく強く腕を振れる左打者に対し、打者に向かって投げるため腕の振りが無意識に弱くなってしまう右打者相手だと、ストレートの球速が130前半から中盤と左に比べ遅くなっています。

 

 

【今後求められる成長点】


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 変則左腕が左右を安定して抑えられるようになるにはスライダー・チェンジ以外の球種が求められます。

 同じ変則左腕の中川選手は一時左から空振りを取れず打ち込まれるシーズンがありましたが、そこで身に着けたのがシュート。左打者のインコースに投げ込める球がなく使えるゾーンが限られたため見切られていたものの、左打者に小さく食い込むシュートを身に着けたことでインコースでファールを取れるようになり、詰まらせられることで左打者も踏み込みにくくなり、ストレートの見逃し率も上がりました。また右打者のアウトコースにも使える球となり、ストレートの軌道で投げ込まれるが直前で落ちて空振りを取る。このシュートによって左のイン・右のアウトコースを攻められるようになり、再び安定して成績を残せるようになりました。

 

 

巨人で2007年まで22年間、名スコアラーとして鳴らした三井康浩氏は「一塁方向へインステップして投げる高梨の球には、独特の角度があり、打者にとっては非常に打ちにくい」と分析。さらに「高梨には左打者の内角をえぐるシュートがある。この日も、糸原は5球目にこの球を見せられたために、その後は腰が引けて外角球に対して踏み込めなかった。巨人では21歳の大江も同じ左のサイドスローだが、左打者の内角へ投げる球がある点で、高梨の方が上で信頼度も高い」と解説した。両サイドのコントロールが抜群で、決して対左打者専用というわけではなく、右打者も苦にしない。

巨人日本一の使者は変則左腕・高梨 分析のプロが太鼓判「柳田ら左打者にも有効」 | Full-Count

 高梨選手も同様にシュートを投げ込んでおり、一方でスライダー・カーブ・チェンジがメインの大江選手は投げ込めるゾーンが限られているため安定した成績を残せていません。ゾーンが限られるため厳しいコースに投げざるをえず、そこからボール先行で自滅する投球となり、2軍メインとなってしまっています。

 現状では体づくりをメインに最速150キロを目指しているため、変化球の習得はまだ手を付ける必要はありませんが、ワンポイント止まりにならないためには現状の持ち球では投げ込めないコースに投げられるようにするための変化球が必要となります。