指名あいさつを終え、阿部慎之助監督(左)から激励を受けた中大・西舘勇陽(カメラ・相川 和寛)
指名あいさつを終え、阿部慎之助監督(左)から激励を受けた中大・西舘勇陽(カメラ・相川 和寛)
巨人からドラフト1位指名された中大・西舘勇陽投手が27日、東京都内の同大キャンパスで阿部監督、水野スカウト部長、円谷担当スカウトから指名あいさつを受けた。西舘は「1年目は1年間一軍に帯同することが目標。将来的には開幕から先発ローテーションに入って優勝に貢献したい」と意気込んだ。球団からの期待が背番号に表れた。ドラフトから一夜明け、提示された番号は「17」。巨人では槙原寛己など多くの名投手が背負ってきた。さらに花巻東の先輩であるエンゼルス・大谷やブルージェイズ・菊池も着けた番号。「花巻東高校出身で特別な数字と分かっている。高校からのつながりもあってすごくうれしい番号だなと思います」と感激した。
大学時代は先発とリリーフでフル回転してきた右腕。先発としてスタートする方針をこの日、伝えられた。阿部監督は「将来は日本を背負って立つ大投手になってもらいたい」と激励。戦国東都で腕を磨いてきたドラ1は「大事な試合で使っていただけるためには信頼されることが必要。大事な試合で自信を持ってマウンドに送ってもらえる選手になりたい」と言葉に力を込めた。
【西舘選手の紹介】
183センチ79キロ 右投げ右打ち
変化球:スライダー・カーブ・カット・チェンジ・フォーク
セットから常時クイックのためのないオーバースローの腕の振りから最速155キロ、常時140後半のストレートを投げ込む右腕投手。130キロ台のスライダー、110キロ台のカーブ、130後半のカットボール、130キロ台のチェンジアップ、140前後のフォークを投げ込んでいきます。
武器は角度と力のあるストレートとフォークのコンビネーション。もともと速球が武器だったもののコントロールに課題をもち四死球から崩れる展開が多くリリーフ登板がメインだったものの、4年秋にコントロールが向上。
ストレートをコースに投げられるようになり、フォークの精度も向上したことで課題だった対左をフォークで仕留められるようになり、スライダーとチェンジでインアウト両方に投げられる変化球ができたことで四死球は10個以内となり防御率も1点台と好投しました。
右投手No.1候補として巨人が1位指名。先発・リリーフ両面で期待されています。
【なぜ獲得されたのか】
2023年ドラフトは大卒投手年であり、ドラフト1位も大阪桐蔭・前田、上田西・横山、ENEOS・度会選手、明治大・上田選手を除けばすべて大卒投手となっています。
その中で巨人の先発ローテは山崎選手が安定し22年は5勝止まりだったものの今年は10勝と2桁勝利を達成。何度も育成再契約を経験し戦力外候補一歩手前だった横川選手がフォーム大改造で先発ローテに殴り込み、4勝8敗と後半に失速したものの先発ローテとしての可能性を見せました。グリフィン・メンデスと先発外国人が揃って結果を残し菅野選手も復活。赤星選手も後半から尻上がりに好投し、戸郷ー山崎ー菅野ーグリフィンーメンデスー赤星選手に横川・松井・井上選手となっています。
しかし菅野選手は来年35歳、横川・松井選手はスタミナが課題で井上選手は2巡目で捕まる課題があり、安定して計算できる若手がおらず、一人故障すればぎりぎりのローテとなるため、ローテの柱となる選手の獲得は必須でした。水野スカウト部長も優勝から遠ざかったいたため即戦力中心の指名を計画していたため、1位は即戦力投手となりました。
さらに、「逆に1位が外れて(外れ1位で)左投手にいってたら(2位で)高校生にいった可能性もあって。そしたら又木が3位の可能性もあった。ドラフトっていろいろと駆け引きがあって、というのが裏話だよね」と明かした。
その中で候補となったのが西舘選手や国学院大・武内選手や青山学院大・常広選手。その中で西舘選手となった理由は2位で取れる即戦力先発右腕がいなかったこと。水野スカウト部長は外れ1位では即戦力左腕を予定していて、その場合2位は高校生の可能性があったと話しており、2位で右腕先発は取れないと踏んでいます。実際12球団の2位指名を見ると、右腕は多くがリリーフ起用されていた選手。西武2位の上田大河選手も西武はリリーフとして見ており、先発候補になるのはSB2位の名城大・岩井選手のみでした。
指名順の都合上いつ取られるかわからない岩井選手一人に賭けるより、2位である程度数がのこる左腕を狙うべく1位は右腕となりました。巨人はホンダ鈴鹿・森田選手を上位指名の隠し玉として持っていたため、1位で右腕を取れれば2位は即戦力左腕を取れると踏んでいました。
【1軍起用への課題】
阿部監督は抽選で引き当てた西舘と対面し、先発としてスタートする方針を伝えた。大学2年まで救援。26日の指名直後はリリーフの可能性も示唆していたが、「(大学3年以降)主戦でずっと先発で投げてきたので、まずはそこの力量を見てみたい。僕の印象では三振を取れる。そこを一番評価したい」と期待した。
阿部監督は先発として計算しており、1年目から1軍ローテとして起用される可能性が高くなっています。
しかし文字通りの即戦力とするには立ち上がりに課題があったり左に対するチェンジアップやフォークが甘く入る場面があり、ある程度ばらけても打ち取っている右に比べると精度が求められます。今の制球も今秋にようやく到達した段階であり、この投球内容を安定して残せるかは未知数。その点からも即戦力7:素材3といった完全な即戦力としてはもう一回りの成長が必要です。
このことからも1年目から7~8勝できる可能性は低く、谷間ローテや中10日くらいのローテで5勝あげられれば御の字。もし先発はく奪となった場合、阿部監督はリリーフとしてもおもしろいと評価しているため、不調の大勢選手に代わり9回中川選手、7・8回をバルドナードと西舘選手が担い、1軍に慣れてきた2年目で再度先発調整をさせる2パターンがあります。3年生までリリーフだったためリリーフとしてもつぶしが効く点も指名されたひとつの理由となっています。