読売ジャイアンツのドラフト戦略を語る

巨人が取るべきドラフト候補選手、また現状の選手たちの実情から取りうるべきドラフト戦略を語っていく

阿部監督が見据える先発7人ローテ、日替わり勝ちパターンは可能なのか

開幕投手は戸郷。先発陣は菅野、山崎伊、赤星、高橋礼、西舘、グリフィン、メンデスらが候補になる。投手陣最年長(34歳)の菅野を、フレッシュな状態で送り出す考えも温めている。

 「先発ローテは7枚(7人制)でもいいかなと思っている。例えば菅野を投げ抹消(先発翌日に登録抹消して中10日以上で回す)で使うのもありかなと」

 日本球界は中6日が通例だが、先発を7人で回せば、菅野以外の投手も状況によって間隔を空けられる。

 「曜日が変わる可能性はあるけど、曜日(の固定)じゃなくて中何日空けるか。1日違うだけで(回復度合いは)全然違うだろうし。空けながら。先発は基本完投するんだと思っていってほしいし、そのイニング(3アウトまで)は投げ切ってほしい」

 守護神の大勢につなぐ勝ちパターンのリリーフ候補は中川、ケラー、バルドナード、近藤、馬場、船迫、泉ら新戦力も含め豊富だ。

 「基本は7、8、9回1イニングいく投手を決めたい。でも例えば7回を2人、8回を2人つくって今日はこっちの投手、みたいに日替わりで回すことも考えている。最後(開幕直前)まで悩ませてほしいな」

 先発も救援も夏場以降の勝負どころを見据えている。

 「疲れとかが出てから(2軍に)落としても仕方ないし。結局、勝負は8月、9月だから。夏をどう乗り切るか考えながらやる」

 沖縄では対外試合5試合を予定。チーム内の競争激化と同時にシーズンを見据えた戦い方も導入する。

 「チーム単位で束になって、相手を考えさせるようなことをやっていく。ベテランにもやってもらう」

【巨人】阿部監督「紅白戦の最終打席は『全部ショートゴロ打ってこい』と言ったの」期待のルーキー「2番」構想も - スポーツ報知

 

【阿部監督が見据える1軍投手運用について】

 2月16日のスポーツ報知の記事にて、阿部監督は1軍選手の起用法について言及しており、投手については「先発7人ローテ」、中継ぎについては「日替わり勝ちパターン」を打ち出しています。

 当初から阿部監督は「2軍から上がってきた先発候補はいきなりローテにいれず、敗戦処理から経験させ1軍慣れをさせていく。そこで結果を出せば先発ローテに加えていく」と語っていました。

 ここでは「先発7人ローテ」「日替わり勝ちパターン」が今の巨人投手層で可能なのかについて言及していきます。

【先発7人ローテについて】

【7人ローテの理由】

 通常先発ローテは6人で回し、移動日で試合のない1日を含めた中6日が休養期間となります。ただし、休養期間といっても登板日に向けて徐々にエンジンをかけるためにブルペンで投げ込みを行ったりするため、休養といっても投げないわけではありません。

 阿部監督は先発を7人にすることで休養期間を増やし、年齢や勤続疲労で故障しがちとなった菅野選手を抹消を挟み中10日で投げさせるようなプランも考えており、先発の頭数を増やすことで疲労回復の期間を長くし、故障のリスクを減らすことを目的としています。夏になると疲労から調子を崩したり故障者が続出することでチーム運用に支障が出ることから、夏に疲労回復のために登録抹消することは考えておらず、9月まで一貫した先発ローテで乗り切るための策となっています。

 

 ただ阿部監督も疲労回復のためだけに7人制としたわけではなく、先発は完投を前提にに、中継ぎを7・8・9回に集中動員するために最低でも6回までは投げ抜いてもらうことを考えており、先発は120球は投げてもらうと語っています。120球完投運用を前提としているため、その分余計にかかる疲労を考慮しての中7日プランとなっています。

 

【7人ローテは可能なのか】

 去年の実績を踏まえての1軍ローテは戸郷ー伊織ーグリフィンーメンデスー菅野ー赤星。ここにドラフト加入の西舘・森田・又木選手。トレードの高橋礼選手。去年先発だった横川・井上・直江選手、育成ながら1軍帯同で結果を残している京本選手が候補となります。

 菅野選手を7番手として中10日とした場合、戸郷ー伊織ーグリーメンー赤星ー空きー菅野(空き)となるため、先発が最低2名必要となります。


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 まずは西舘選手。西舘選手は球種にとって精度にばらつきがあり、即1軍先発で使うには2ストライクから粘られ球数が嵩み崩れるリスクを備えています。森田選手の故障により先発候補が減ったことや、ここまでの起用数を見ても先発7番手候補筆頭ですが、無理をしてまで先発に加えることはないというのが現状の評価。大卒1年目でもあるため、菅野選手との週変り7番手で同じように中10日で運用となります。


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 又木選手はここまで最長2イニングを投げ順調な仕上がり。スカウトからも先発・中継ぎどちらでもいけると評価されています。左の中継ぎは森田・吉村・代木選手が故障。今年は定例的なワンポイント起用はしないと話しているため、左に苦労している大江選手は微妙。今村選手は良くも悪くも使いやすいロングリリーフのため、左の中継ぎが不足しています。

菅野(智之)、戸郷(翔征)、外国人2人(フォスター・グリフィン、ヨアンデル・メンデス)に山崎(伊織)、赤星(優志)、それにルーキーの西舘(勇陽)にサウスポーの森田(駿哉)。先発候補はいっぱいいるんです、頭数はね。あと高橋礼もまずは先発でやってもらうし、先発候補は9人ぐらいいます。贅沢な悩みですけど。

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 もともと先発候補の9人の中に又木選手を挙げていなかったため、森田選手の回復次第ですが、現状では先発よりも左の中継ぎ候補。西舘・高橋選手が駄目だった場合は先発候補となります。

 

 高橋礼選手は実戦では紅白戦のみ。阿部監督は先発で考えていると何度も答えており、貴重な変則先発として期待されています。高橋選手については28歳と脂ののった年齢であるため、中7日で回る6番手候補。懸念点としては杉内コーチからも挙げられている対左の攻め方。そして負担を考慮してセットで投げていたフォームをワインドアップに変更しており、疲労による故障の2点となります。

 横川・井上・直江選手の3人では、去年の実績を踏まえれば横川選手が候補。去年もシーズン途中から疲労と決め球不足で球数が嵩み、4~5回で崩れるパターンが多くなっていました。

先発の勝敗は、●●〇--〇-●●---●●●で、先発に限れば5連敗。5月までの先発7試合で5回未満の降板は、5月5日の中日戦で4回1/3で降板の1度しかなかったのが、連敗のはじまった6月以降の8試合では、5度が5回未満での降板と、5回まで投げきれないケースが急増している。

 5月まで38回1/3を投げ11失点(自責11)の防御率2・58だったのが、6月以降は、37回1/3を24失点(自責23)の5・54と悪化しており、早期降板を招いている。

【巨人記録室】横川凱、5回未満での降板が6月以降急増…8戦中5戦 - スポーツ報知

 直江選手は去年のオフからチェンジアップを解禁。台湾WLでは好投を続け、2軍キャンプ組ですが先発候補の一人。まだオープン戦に呼ばれていないため、高橋・西舘選手が駄目だった場合の8・9番手候補。井上選手は去年の内容を踏まえると、敗戦処理で1軍に慣れさせるところからのスタートとなります。


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 育成の京本選手はここまで無失点好投を続けており、支配下最有力に挙げられる選手。ただ先発としてみるには制球の甘さ。そしてスタミナが切れてくると制球が悪化するのが去年からの課題。

 短いイニングの中継ぎならいけますが、先発としては決め球不足が課題になりそうなため、来年先発として本格運用になる可能性が高そうです。

 ここまでを踏まえ、7人ローテをくむ場合は戸郷ー伊織ーグリーメンー赤星ー高橋礼ー菅野(西舘)となり、次点で又木・横川・直江選手となっています。未知数の選手や1年投げ抜いていない若手で組む必要があり、現実としてはかなりぎりぎりのローテになりそうです。

 

 

【日替わり勝ちパターンについて】

左:中川・バルドナード・高梨・又木

右:松井・馬場・堀田・田中・京本・畠・菊地・船迫・泉・近藤・大勢・ケラー

 

 ドラフトで又木選手、現役ドラフトで馬場選手、トレードで泉・近藤選手、さらにケラー選手を獲得と、オフに中継ぎの集中強化を行った結果、去年に比べると見栄えのする選手層になりました。

 阿部監督は敗戦処理は2軍からあがってきた先発候補に投げさせると語っているため、ここでは僅差の負け試合で投げる選手と勝ちパターン2枚を考えます。ここでは守護神として何度も名前を挙げる大勢選手が1軍帯同できていると仮定して組みます。

 中継ぎは7・8・9回に1イニング1人ずつ投入を理想としていますが、もちろん勝つためには1イニング2人導入もあると話しています。

 去年の実績を踏まえると、確定の勝ちパターン中川・バルドナード・大勢・ケラー選手。この4名は1イニング1人の候補となります。

 1軍登録可能数は2019年から1名増えて29名。その中でベンチ入りできるのは25名で登板しない先発4名がベンチ外となるため、29名の枠内で組む場合は以上のような構成となります。秋広選手はここまで攻守ともに精彩を欠いているため開幕は2軍としています。

 

 いや、これ敗戦処理枠入り込む余地ある?というような内容。堀田選手や畠選手、近藤選手、高梨選手などが漏れます。今年の内野手は守備固めを入れる必要がなく、比較的足を使える選手も多いため、代走・守備固め要員を一人減らし敗戦処理の2軍先発が1名入れば、勝ちパターン2枚は十分に可能。

 ただし勝ちパターンの一つを7・8回それぞれに2名導入するとしても、勝ちパターン2枚で組むには最大で7回3名、8回3名、9回2名の合計8名必要。負けている場合の中継ぎは敗戦処理先発候補と2名しか入れられず、最低1~2イニング投げられる中継ぎが必要です。そのために馬場選手や菊地選手が入っています。

 中継ぎの頭数が増えて疲労・故障時の次の中継ぎ候補が豊富なため、先発をしている京本選手と松井選手を無理に中継ぎ帯同させる必要がなく、2軍の先発候補が少ないため、この二人は2軍で先発として育て、来年以降の先発候補として運用することができます。

  

【まとめ】

 先発7名構想についてはわりとぎりぎり。勝ちパターン2枚構想については登録人数の点からぎりぎりではあるが、候補だけ見れば十分可能と判断しました。来年以降も先発7名構想を続ける場合はドラフト戦略にも大きな影響を及ぼしそうです。